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ワタシタチ。

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元彼女















君の元彼女の話。









乗り込んだ電車


わたしの隣
可哀想なくらいボーダーが似合わないおじさん


全然知らないひとなのに
吐きそうなくらい懐かしい香りがして


甘くて甘くて、これでもかってくらい甘くて


これはわたしが大好きだった香り



「何の香水なのかな」



当時はそんなことを思ったりもしたけど







今は必要ない
し、
今更知りたくない







そのおじさん、わたしの最寄駅で降りて


あの頃のことを簡単に思い出して


一緒に電車を降りて
駅前で「帰る方向は逆だからここでバイバイだね」って
ふたり少しさみしそうに









だってこの世界には貴方と似てる人なんてきっと何万と居て
「別に誰でも良かったの」とか女優さんみたいにスカして言っちゃって
へコんで、泣いて、「ごめんね。やっぱりわたしは明日も貴方と手を繋ぎたいの。だから仲直りしたいです♡」ってまたこのパターンかよまじでうざいなあと思われる系のメールを送信してキモがられて音信不通になって別れて










大好きだったのよ、ただそれだけのこと。






















こっそり元カノの画像を見てたら
気分悪くなって


こいついつまでふたりの画像載せてんだよって噛んでたガムをゴミ箱に吐き捨てて


ホームの階段に落ちていた綺麗なハンカチをわざと踏み潰し


そんなこんなで汚いトイレの鏡の中の自分に見惚れた








「こんなことしちゃう私って最高に可愛くない?」








コーラ、グミ、あとはストッキング


コンビニ帰り
曲がり角で誰かとぶつかった




昼間のおじさんだ




もうあの香りはしない



なんだよ、なんでだよ



わたし、気付いたらおじさんの腕を掴んで



「昼間つけてた香水はどこに売ってますか。」なんて
またあの頃のように気持ち悪い台詞が喉から出てきて



ストーカーみたいとか
頭おかしいとか
もう一人にさせてくれとか



だって貴方はさみしがり屋だったから
わたしが隣に居てあげなきゃひとりになっちゃうから









丸くて黒い瞳がわたしだけを見つめた


そう、これ。
貴方の世界には今わたしだけしかいないって感覚





「...彼女に貰ったものなので分かりません。」





腕を離した


おじさんは暗い路地へと去って行った










急に涙が溢れて


「彼に聞かなくて良かった」と
新発売!という文字に惹かれて購入したグミを口に2.3粒含んだ




うまく飲み込めなくて

味しないし

てか普通に不味いし

誰がこんなもの買うんだよってパッケージをみたら




「初恋の味♡」




鼻で笑った










初恋とはこんな味

無味無臭

悔しくて全部食べた














ベッドに寝っ転がり彼の連絡先を削除
元カノのSNSもお気に入りから削除
ふたりの大切な思い出も記憶から削除





空になったグミの袋をクシャクシャに丸めて
机の上のコーラに投げた







泣き止んでからはきちんと味がした

甘酸っぱい味が口に広がってさみしさが募った。

















次の日わたしは二年間続けたバイトを初めて休み(しかも仮病)、
内緒で元カノに会いに行ったよ。











そのひと、わたしを見つけて何て言ったと思う?








「彼、まだ“あの香水”使ってる?」







女って







「もう“別れてる”から知らない。」







とことんイヤラシイ。











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『元彼女』/ meluco.







作品名:ワタシタチ。 作家名:melco.