ワタシタチ。
short film
喉が渇いて起きた午前三時
夢ばかり見ていた白い部屋
ペンキで鮮やかに色を散りばめた
人生で一番好きな人と別れた夏の終わり
初めてお酒を口にした居酒屋のアルバイト
一度も着ることがなかった紫の浴衣
恋が何かも愛が何かも分からないまま
ただ、触れてみたかっただけの相手の体温
花が咲いている
君は相変わらず
花も咲いている
僕は相変わらず
いつもの神社で待ってるよ
守れなかった約束
傷つけ合った朝方までの長電話
全てが輝いて見えていたのは
戻ることは出来ないと知っていたから
髪を切りすぎた帰りの電車
少し軽くなった気持ちの重さ
君が口ずさむ 横顔 繋がれた右手
忘れないように隣で聴いていた
花が咲いている
君は変わりゆく
今も咲いている
僕は相変わらず
いつもの駅で待ってるよ
土砂降り ひとつの傘
踏切の音 遠回りした家路
公園の時計 離れたくなくて
最後のキス 風が吹く
君が言う「映画みたいな終わり方だ」って
花が咲いている
君は相変わらず
花も咲いている
僕は相変わらず
花は枯れていた
君はどこか遠く
花は散っていた
僕は気付けず
そっとあの夏で
今もずっと待っている
--------------------------------------