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道化師 Part 3

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「大体の事は聞いた、俺らは何もなかったよ。一海にも話すか?どうする?ミユキが不安定な時あるだろ、心配してる、何か悩みがあるんじゃないかと。ヒロの気持ちもわかるが、この状況を分かった上で自分達でも危険から避けるようにしたほうが良くないか?」
龍也の言っている事は正しい。
「わかった、話そう。全てじゃなく兄貴が危ないと言うことは言っておかないとな」
リビングに戻ると、一海がミユキを笑わそうと一生懸命話しをしている。微かにミユキも笑みを浮かべてる。
俺と龍也がリビングに戻るのを待っていたように亮は濃いめのコーヒーを頼むとソファに沈み込むように体を落ち着けた。
「この時間から濃いの飲んで大丈夫なのか?」
「どうせ寝れないからな、いいさ。で、話はついたか?」
俺たちが何を話していたのか見当がついてたみたいだ。
「一海に大まかな事だけ話そうと思う」
「そうか、そうだな。お前らは明日学校だし、さっさと話しを済ませるぞ」
それぞれの飲み物を手にソファに俺たち四人が座り、亮はカウンターから椅子を持ってきた。
「お前達がここに引っ越した理由を一海には、はっきり言ってなかったが、どう感じていた?」
「僕は、龍也と一緒ならどこでも同じなんだけど。ミユキさんやヒロさんと一緒と聞いてとても嬉しかったよ。きっと、ミユキさんを守る為には必要な事なんだと感じたけど、どうして?」
「ミユキを守るって、一海は知っていたのか?」
龍也が、一海一人を除け者にしているように感じてたから、驚いてしまった。
「何も知らないけど、ヒロさんが凄く大事に思っているし、ミユキさんから目を離さないでしょ。鈍い僕だって何かあるんだなって思うよ」
そんなにあからさまな態度だったかと、ミユキを見れば、真っ赤になって俯いている。
亮は苦笑いを浮かべ、
「一海は全然鈍くなかったって事だな。それで、大まかな事だけ話すが、ミユキには兄貴がいるんだが、それが暴力男ってわけだ。ミユキにかなり執着してる」
「ちよっと待って、ならどうして僕までなの?僕、その人の事は知らないですよ」
「そうなんだが、向こうさんはお前の事知ってるんだ。ミユキの身辺というか、ヒロの周りの人間も調べてあるみたいだな。龍也やヒロより弱そうな一海に目をつけた節があってな、利用できると思ったのかもしれないが、お前も匿うメンバーに入ったと言うことだ」
なるほどと納得したような、まだ疑問が残る顔で
「何で今になって話そうと思ったんですか?」
亮にばかり話させていた俺だが、今日の事はその場にいた俺から話そうと思い
「今まで何もなかったから、安心していたんだが、今日駅のホームでミユキが線路に突き落とされかけた。また、何が起こるかわからないし、俺や龍也が守るにも限りがあるだろ」
「うん、分かった。二人の負担にならないように僕たちも気をつければいいんだね」
それまで黙っていた龍也が
「一海は偉いな、いつもぽやっとしてるのにな」
と、一海の頭をヨシヨシと撫ぜている。
「一海の理解の早さに感謝だな、さて、お前達はもう寝ろ、明日早いぞ」
腰を上げかけた時、ミユキが一海にありがとうと頭を下げた。
「ミユキさん、やめて下さい。僕もいつも側にいますからね、お互い強い二人に守ってもらいましょうね」
と明るく笑っている。
ホントに太陽のようだと思った。

一海の柔らかさが俺たちをホンワリと包み、深刻になり過ぎず話ができた気がする。ミユキも落ち着きを戻したように思えたが、それでも死んでいたかもしれない恐怖は拭いきれないだろう。ベットに入っても眠れない様子のミユキ、俺も眠気がやってこない。
「ミユキ、寝れそうにないか?」
微かにごめんねと声がするけど、顔を上げようとしない。
「顔をみたい、俺を安心させてくれ」
布団から躊躇いがちに顔を上げたミユキの目は潤んで、何かを言いたそうに見上げる瞳に、薄く開いた唇に体が疼く。
「僕、こんな時なのにヒロに抱かれたいって思ってる。ごめんね、僕って淫乱なのかな。ヒロ嫌いにならないで、一海みたいに可愛くないけど」
捨てないでと泣きそうな顔をする。
「ミユキは可愛いよ、俺も抱きたいのを我慢してるんだから、あんまり挑発するなよ。抑えが効かなくなるだろう」
足を絡め、抱き締めると熱を持ち始めたものがミユキの腿にあたり、ミユキの甘い吐息が俺の首元を熱くする。
「ヒロ……」
俺の名を呼ぶ唇に口付け、吐息ごと絡め取る。
隣に龍也達がいるのはわかっていても、止められなかった。まるで生きている事を確かめるように事切れるように眠りに着くまで、お互いの熱を感じ求め合い続けた。
翌朝、昨夜の名残を残したまま眠ってしまった体は、あまり気持ちの良いものではなく、皆んなが起き出す前にシャワーを浴びる必要を感じた。
隣に眠る穏やかな寝息からは、あの時の妖艶な色香は微塵も感じない。
そっと、ベットから抜け出しリビングに誰もいないのを確認し、何も身につけぬままバスルームに向かった。
バスタオルだけの姿でリビングに出ると、
「ヒロ、今回は許してやる。次は、無いからな、我慢を覚えろよ」
亮に呆れた顔で注意される。
龍也からも何か言われるのを覚悟する。
服を着てミユキの体を拭いてやる。
「ヒロ、おはよう」
掠れた声が聞こえ、無茶をしたかと心配になってきた。
「ミユキ、おはよう。辛くないか?拭いてるがシャワーする方がいいか?」
「うん、シャワーにする」
バスルームに向かおうとするが、上手く立てないでいる。
バスタオルを体に巻き抱き抱え、部屋を出ると、亮がキッチンでコーヒーを入れていた。
「亮さん、おはようございます」
声が掠れ殆ど声になってない。
「ミユキ、今日は黙っていた方がいいな、その声色っぽ過ぎ」
「亮さん、揶揄うのはやめてくれ」
赤く染まったミユキを急いでバスルームに隠す。
シャワーを済ませ着替えたミユキに俺と同じホットミルクを入れてやる。
リビングで寛いでいると龍也達も起きてきた。
「おはよう」
「おはようございます」
ミユキが声を出さず微笑むと、二人は息を飲み真っ赤になっていた。
俺が睨むと龍也は慌ててごめんと洗面所に一海と駆け込んだ。
「ミユキ、今日は学校休め」
どうして?と首を傾げる姿もエロだだ漏れで人目に晒したくなかった。
朝食を食べながらも、気怠そうな仕草のミユキに顔を赤らめる二人、
「お前らいい加減しろ。ミユキ、絶対に今日は外に出るな」
「どうして、大丈夫だよ。体も辛くないし学校行けるって、ヒロ心配し過ぎ」
「体が辛い辛くないじゃない、今日のミユキは……」
なんだよと膨れる顔も可愛いいが、今日は色香が漂っている。
「ミユキ、ヒロの言う通りだよ、今日は大人しくしていた方がいいよ」
龍也の隣で一海も頷いている。
「ミユキは俺と留守番、ヒロお前らは早く学校に行け。鬱陶しい、店はアキラに開けさせるから心配するな」
俺たちは亮に追い出されるように学校に行かされた。
龍也と一海のため息が俺を攻めているようで居心地が悪い一日の始まりになった。

作品名:道化師 Part 3 作家名:友紀