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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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忘れじの夕映え 探偵奇談8

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「…あっくん、」

青葉は自分の声で目を覚ました。肌寒い夜の中で。自室の中は暗く、静まり返っている。半身をベッドの上に起こし、青葉はしばし意識が覚醒するのを数秒待った。

「夢…?」

起き上がり、右手を胸に当てる。妙にリアルな夢。子どもの頃の夢。普段、夢なんて殆ど見ないのに。
右手に、今の今まで、本当に誰かと手を繋いでいたような感触がはっきりと残っている。
どくんどくんと心臓が音をたてて走るのを夜闇の中に聴く。なんだろう、ここはまだ夢の続きなのか?青葉は息をひそめ、部屋を包む闇に向かって問いかけてみる。


「……だれ?」


小さく呟いた声に応えるものはいない。いないはずだ。それなのに、暗い部屋の中に気配を感じる。じっと動かない気配。こちらの様子を伺う気配。

(いるの…?)

瑞に聞いた話は蘇る。死んでいた友だち。思い出せない友だち。夕映えの中で交わした、いまは失われてしまった約束のこと。

学校であんな話をしたから、聴いたから、夢を見たのだろうか。


「あっくんなの…?」


闇の中に問いかける。すう、と誰か息をのむような気配が伝わり、全身に鳥肌がたつ。布団をはぎ、青葉は意を決して電気をつけに走る。はじける光に目をすがめ、部屋の中を見渡すが、そこには誰もいない。こちらをうかがうような気配も消えている。