光と影
ハナミズキ
黒い列が蟻の行進の様に流れて
建物に吸い込まれていく
僕もその蟻の一匹
何の思いも無く重い足を引きずる
前を行く蟻がいなくなり
視界に白い花が広がる
花に埋もれる様に眠るのは
見たくない、何も感じたくない
逃げる様に背を向ける
思い出したくない記憶
スライドショーを見ているかのように
流れていく悲しい記憶
愛されない幼子の記憶
去りゆく背、拒絶する背
あの人との記憶はピリオドを打つ
ピリオドを打った記憶に次はない
目の前の全てに蓋をする
見ない、記憶しない
肩を抱く恋人の暖かさに
あの人の温もりを求めてた
あの人の優しく紡ぐ声を待っていた
僕の心は震える、愛を求めた愚かしさに
天に召されたあの人に
悲しみは湧かない
苦しみも、もう湧かない
ただ、知って欲しかった
僕は、愛していたと
愛されたかったと
僕には幸せにできなかった
苦しみしかあげられなかった
ごめんなさい
幸せになれて良かったと
ハナミズキをあの人の側に
僕の無言の思い
最初で最後の贈り物
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ハナミズキの花言葉
私の想いを受けてください
僕を捨てた母なれど点に召されるときは幸せでいてほしい