睡蓮の書 四、知の章
カムアは目を見開いた。もし呑まれてしまったら、ラアが別人になってしまうかもしれない。大いなる力を持ちそれを扱う彼が、ラアと同じ姿でしかしカムアのよく知る彼自身と違うとき、カムアはそれをラアだと認識できるだろうか。ずっと求めてきたあの、唯ひとつの星の主である彼だと。……そうでなければ、意味がないのだ。ラアでなければ――。
カムアは懇願するようにラアの姿を求めた。炎の渦に包まれてときおり覗くラアのその瞳は、炎の輝きの中でよりいっそう闇色を際立たせていた。
作品名:睡蓮の書 四、知の章 作家名:文目ゆうき