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チェリーボーイのシャル・ウイ・ダンス

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「いいから、もって」
 二人で大人の骸骨が入っている棺を子供の部屋に持って行き、隣り合わせにした。
凱斗は「これでよし」そう言った。
そのときだった。凱斗の様子がおかしい。目つきがいつもの凱斗じゃない。凱斗が声を出す。凱斗の声じゃない。子供の声だ。
「お兄さんたちありがとう。やっとお母さんと一緒だ。ありがとう」
「おい凱斗」僕が言うと、今度の凱斗の声は、女性の声だった。
「青年たち、ありがとうございます。やっとわが子と一緒になれました。私達はクリスチャン。江戸時代のクリスチャンでした。寛永6年徳川秀忠のもと、私達は踏み絵というキリスト教を根絶させようという風習により、クリスチャン狩りにあいました。私は子供に、キリスト教を深く教え込んでいました。そうは言っても、私は自分の命が大事。踏み絵のとき、それを踏みました。しかしなんということでしょう。わが子がその踏み絵を踏まなかったのです。そして、処刑されようとしたとき、私は、『私の命を差し上げますから、この子だけは助けてください。私が身代わりになりますから、この子の命だけはどうか……』そう言ったのですが、我々は幕府に二人とも惨殺されました。そして、二人別々に葬られました。二人は棺に入れられましたが、どういうわけか、我々は別々の部屋へまつられました。今日あなた達、青年が来てくれたことは、我々にとって本当に幸いです。ありがとうございます。玄関は戻しておきました。本当にありがとうございました。どうかお帰りください」
 凱斗はそう言うと、ふっと我に返った。「あれっ俺どうしたんだろう」
 またいつもの凱斗の声に戻った。
「憑依?」僕はそう言った。
「なんか分からないけど俺にも先程の子供とお母さんの言ったことが頭に残ってる」
 玄関を見た。どういうわけか陥没していたはずの玄関が戻っている。携帯も元に戻っているようだ。二人で無言でその屋敷を跡にした。僕は、キャンプ場までの帰り道、
「俺達いいことしたな。全くお前が子猫なんか助けるから。でもいいことしたな。幕府の踏み絵。無残な歴史。確かに政府に関係している」