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月とコンビニ
月とコンビニ
novelistID. 53800
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物書き

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妹   どうぞ、兄さん。
男   …、ありがとう。
妹   どういたしまして。
女   んー、おいしー。ゆずちゃん、てーを淹れるの上手なんですね!
妹   ほんとーですか? よかったー。
男   んー、ほんとだ。うまい。
妹   うまくないことがあった?
男   ない。
妹   どーだ。
男   まいったー。
妹   まいらせたー。
女   のんのん!
妹   ところで兄さん。
男   ん?
妹   兄さんいま、お付き合いしてるメスはいないのよね?
女   ごぶふっ!
男   ああ。
女   げほげほげほげほ!
妹   あらあらあらあら、まあまあまあまあ。
◇ポケットよりハンカチをスタイリッシュに取り出し、女の洋服や机を拭く。
女   あ、ああ、す、すみません!
妹   あら、あららららん? 
女   え、なに?
妹   よーーーーーーーーーーーーく見ると梅子さん、とってもすべすべなお肌をしてらっしゃいません?
女   え? え?
妹   足もすらーっと長くてモデルさんかと思ったわ! むちぷりじゃないけど、ほど良いスタイル! 鼻は低くてもぱっちり二重! ショートな黒髪がお似合いね! 性格ならば文句なし! むっつりすけべぃっぽいところもなんだかんだ言って、べりーぐーね! こんな女性をほっとく男がいるかしら! いない! ねえ、兄さん?
女   え、あ、お、もがもが。
◇女、男を見つめる。
◇男、女を見つめ返す。
◇恋に落ちそうな雰囲気。
妹   落ちろー! 落ちろー! 落ちろーーー!
◇男のポッケから鍵が落ちる。ちゃりんと音がなる。
妹   はい落ちたーなにか落ちたーなになになにそれー!
男   あ、これは…。
◇男は急いで鍵を拾い、隠すようにポッケに入れる。
妹   なにそれ、鍵? なんの鍵? なんで隠すの?
男   あの、それは…。
女   ん?
男   いえ。
妹   ねえ、兄さんなに? なんの鍵?
男   これは…。
妹   これは?
男   …、そう、友だち、に、会うための、鍵、かな?
妹   とーもーだーちー? 兄さんに、友だちなんていたの?
女   あの、なぜお友だちの鍵を?
妹   だいたい、おとこ? おんな?
男   お、いや、うん、…おんな、かな。
女   え?
妹   兄さん! え? 女! でも、付き合ってるメスはご不在だって…。あー、友だちって、あー、もー、もう少しで、もう少しなのね! もう、厳密に友だちとメスの区別をつけなくたって! 鍵を渡されてるんだからもお! もうほぼほぼ義姉さんじゃない! やることやってー! すみに置けないわー、もう兄さん! このこの!
男   な、や、まあな。
女   えー?
妹   それならそう言ってよね。もう、知らなかったから、こんなのとくっつけようとしてたじゃない。
女   こんなのー?
妹   それより、もう、早く紹介してよねー。それよかまず告白が先か。落とすんじゃ、必ず落とすんじゃぞぃ! ぼでいじゃ、ぼでいを攻めろ! 文字通りな!
男   お、おう!
女   だ、だめです! ぼでいはだめです! 攻めるなら、私のぼでいにしてくださいっ! ねっ?
男   え、あ、梅子さん?
妹   なにいっとるんじゃい小娘いっ! 
男   な、ゆずちゃんの方が小娘じゃないですかっ!
妹   ああ、みそじか。
女   かっちーん。
男   おいやめろゆず。
女   せんせっ。(はーと)
男   真実を突くのはよせ!
女   せんせっ。(なく)
妹   だって兄さん、あんな貧相なむねっころのみそじがおりますか?
男   おっぱいはおっぱいだろうが!
女   そんなっ、腐っても鯛みたいな言い方しなくてもいいじゃないですか!
妹   兄さんは、あんなむねっころでも触りたいと思うの!?
男   さわりたいよっ!
女   いいよっ!
妹   ようし、胸を張れいっ!
◇女は胸を張る。
妹   爆笑っ! そんな張れぬ胸でよくぞ生きてこれたなっ!
女   なにっ!
妹   鍛えるべきは大胸筋ぞっ!
女   そうだったのかっ!
妹   そうだ!
男   そうだったのかっ!
妹   胸を張って生きられる胸を持ちなさい。いいですか、大胸筋です。
女   はいっ!
妹   大胸筋を鍛えなさい。そして、兄をあきらめなさい。
女   わかりました! そしてわかりません!
妹   いいでしょう。すけすけぽんのあまいのを食べましょう。
女   そうしましょう。
男   へんななまえー。
妹   まるで梅子さんの下着みたい。
女   しねっ。
男   え?
女   いただきます。
妹   いただきます。
◇女と妹、すけすけぽんのあまいのを喰う。(以下、食事中の声。)
女   ああ、おいしい、ああ、おいしい!
妹   ぎいいいいいいいいやああああああああああ!
女   ああ、おいしい、ああ、おいしい!
妹   ぎいいいいいいいいやああああああああああ!
◇くるっぽーんくるっぽーんと時計が鳴く。
女   あっ、時間ですね。すけすけぽんのあまいのも食べ終わりましたし、この後、豊見山とみお先生との顔合わせもありますので、すみませんがこの辺で失礼させていただきます。
男   え?
妹   え、もう行くの?
女   はい。
妹   いやっ。
女   ゆずちゃんっ!
妹   梅子さんっ!
女・妹 ひしっ!
◇二人、熱い抱擁。そのまま、以下進行。
女   先生、原稿ですが、締切厳守でお願いいたしますね。HOTEL-SUKESUKEPONに缶詰は先生も嫌でしょう。
男   あ、はい、いやです。
女   今日見た限りだと、光は見えてきたみたいなので大丈夫でしょう! 頑張りましょうね。
男   …、はい。
女   それではゆずちゃんも、てーごちそうさまでした。
◇抱擁をとき、見つめ合う。
妹   また来てね、梅子さん。
女   もちろんです、お兄様の駄文に商品価値がある限りは、きっと…。
妹   うん…、うれしいっ!
男   ひどいっ!
女   それでは失礼します。
妹   あ、お送しますね。
女   え、すみません。
妹   いえいえ! それにしても、なんですけすけなんですか? どきどきする!
女   淑女の嗜みですよ。
妹   そうなのか、買おう!
◇妹と女ハケ。
女(声) きゃっきゃうふふ。
妹(声) きゃっきゃうふふ。
◇妹と女の声が遠くなる。しばらく見送った後、男は机に向かう。
◇少し筆を進めるが、消す。頭を抱える。
◇机から離れ寝そべると、ポッケから鍵が落ちる。男は鍵をじっと見つめる。
◇鍵を拾い上げて、机の引き出しの鍵穴にさす。引き出しを開ける。
◇引き出しから、彼女が出てくる。彼女イリ。
男   …。
彼女  …。
男   やあ。
彼女  ん? あいにきてくれた、やっとあいにきてくれた、まってった!
男   ほんとう?
彼女  ほんとうほんとう、うそつかないもん。
男   そうだろうね。
彼女  どうしたいの、なにしたいの、なにされたいの?
男   なにができるの?
彼女  んー、ぼうけん、れんあい、なんでもござれ? でもこんかいはー、なんだろ?たのしみだね!
男   うん、たのしみだ。
作品名:物書き 作家名:月とコンビニ