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謝恩会(前編)〜すれ違う手と手〜

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   * * * * *

 審判の日、晴乃は眠れぬ夜を明かした。出せる力は出しきったのだから、あとは天が味方してくれる。仲間や家族の言葉を信じて今日の日を迎えた。影響ないのは分かっていても日頃の行いにも注意をした。晴乃はいつもより早くに起きて、ショートの髪型を整え、大学の最寄駅でサラと悠里を待った。

   * * *

 キャンパスへ近付くごとに歓喜の声と落胆の声が入り交じる音量が大きくなっていく錯覚を覚える。この日は大学で一番賑やかな日であるともいえる。それぞれ受験生が今までため続けた力を放出した結果が今日発表される。晴乃が挑戦した大学は関西だけでなく全国から受験生が集まるような難関だった。門をくぐればユニホームを着た運動部の学生の中に大手予備校の幟も立っていて、端っこの方にはテレビのカメラも来ている。
 
 案内に従って理学部の掲示板の方へ3人は足を向けた。晴乃は下を向き、両脇を捕まれて喚声が生み出す混沌の方向へ耳だけを頼りにまるで連行されるように足を動かす。後悔はない、試験本番も悔いなくやりきっただけに気分はスッキリしているが、結果ばかりは分からないだけに少しの不安はある。
「泣いても、笑っても」
「The time has come(さあ、時は来たよ)」
両脇にいるのは同じバンド仲間の悠里とサラ。励ましは嬉しいけれど、既に進路を決めた二人の言葉は自分の心の奥に届いていない。そう思っている自分が辛い、そして正直、怖い。近づくにつれて晴乃の足は水を含んだ靴のように重くなり、両脇の二人が足を止めたので自分の足も止まった――。

「さあ、行くで」
「うん……」
「『せーの』で見るで」
 両脇のサラと悠里、そして家族、彼氏、友達……今まで掛けた不安と心配の結果は自分がおよそ90度だけ首を上げれば明らかになる。そして手元にある何度も見て覚えてしまった受験票を3人で見つめた。もう、あとには退けない――。

   「せーの!」

 三人は晴乃を真ん中に肩を組み、一斉に理学部の掲示板を見上げた。番号を順繰りに探した、時間は全くかかっていないくらいに見なくても覚えている番号のところで三人の目がほぼ同時に止まった。それは掲示板のただの数字の羅列のはずなのに、自分の番号だけが電光掲示板になってるかのように、三人の六つの目に光っているように見えた――。

 三人はまるで申し合わせていたように揃って声をあげ、声にならない奇声をあげて互いに抱き合って喜びあった。晴乃も悠里も涙を流し、今までずっと表に出せなかった感情が一気に爆発した。恥ずかしくもない、周囲のあちこちで叫び声が聞こえていたのだから。