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謝恩会(前編)〜すれ違う手と手〜

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五 S'H'Y and M



 晴乃は一人早めにQUASARに入っていた。進学先が決まった、それも第一志望以上の大学に合格した。家族親戚にはたいそう喜ばれ、祖母には泣かれるくらいだった。
 にも関わらず満足が出来ていない。それは、同じバンドにいる悠里がいることだ。
 一足先に進路を決めた彼女は日系二世のアメリカ人の父を持つクォーターだ。勉強は苦手と言うが、英語を理解しポテンシャルは高いはずなのに自分の限界まで挑戦することなく早々に進路を決めた。
「同じ条件で勝負する以上、真剣勝負する」
と日頃明言する、武士道を地で行くような彼女が早くも降りた。

 そして、自分が合格通知を待つ間、彼氏とほぼ毎日道場通いするのを同じバンド仲間のサラから聞いて知っていた。 

 悠里は自分に気を使って敢えてそっとしていたのも、自分が彼女に対して持つ苛立ちが嫉妬であることは分かっている。でもそれを抑えきれない自分がやるせない。
 それでも悠里は信用出来る友だち以上の存在であることには変わりない。そして、彼女は潔しを美徳とするような人物だから間違いはないと信じているし、信じたい。本人にそれを聞くことが愚問であることも分かっているつもりだが、晴乃は悠里にそのことをどうしても確かめたかった――。