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謝恩会(前編)〜すれ違う手と手〜

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 雑談が続く中、悠里が手にしたままの携帯電話がブルブル震えた。滅多に届かないメールに、悠里は慌てて携帯電話の画面に注目した。
「おっ、そうですかぁ」
悠里の表情がパッと明るくなり、色が戻った。
「何が?」
「ほら――」

  合格したで。でも、倉泉と同じ所にしようか考え中

 メールの主は剣道仲間の健太からだった。元剣道部の主将で、晴乃の彼氏である健太は晴乃同様、国公立大学の試験を受けた。受けたのは地方の大学であるが、その結果が普段使われない悠里の携帯電話に入ってきた。
「ほう、キャプテンも合格しましたか」
「いやあ、良かった良かった」
仲間の朗報を確認した悠里はニコニコして携帯をテーブルにおいた。サラはその動きを見て一拍置くと、下がった眉を上げて悠里の顔を見た。
「あのさ、悠里」
 声色に反応して悠里の表情も固くなった。でも、その意図がわからず目が泳いでいる。

「何、やろ……」
悠里の言葉に頬杖をついたサラが息を吐いた。
「あんたも恋多き女やねぇ……」
動揺して眼鏡の縁を掻く悠里の顔を一度見て、サラは目を閉じて首を大きく2度横に振った。
「そのメール、ルノに見せられる?」
「いや……」
「それにキャプテンも最後に爆弾落としとう」
「どこが?」
「知らんかったら教えたるわ」
サラはそう言ってメールの後半を指差して画面をつついた。
「第一、彼女がいる者が他の女子にこんな内容でメール送るかぁ?」
 サラは呆れ顔でシートの背もたれにふんぞり返り、この状況で出るいつもの口癖を吐いた。

   no way(ありえない)

 悠里はサラの表情を見た。確かにその通りだった。サラに言われた通り晴乃の立場になって考えてみると、彼女の親友に送るようなメールの内容ではない。自分の鈍感さに反省し、自然に表情がうつむき加減になり、次の言葉が出なくなった――。
「嘘やって」
うつむいた悠里の頭が上がった。
「悠里が天然のはみんな知っとうから大丈夫よ。坂井くん以外は」
「だからあたしはそんなんとちゃうって!」少し声が大きくなり、悠里はすぐに肩をすぼめた「天然なんは認めるとこあるケド」
「あたしが何とかしてあげる。だから、悠里は変に取り繕わなくていいから」
 高校生活最後を締め括る謝恩会。内輪揉めをすれば成功するはずがない。今の心理状況でこの状況をまとめられるのは自分の役割と思い、悠里に屈託のない笑顔を見せた。