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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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黒闇抱いて夜をゆく 後編 探偵奇談7

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闇を覗く眼



日の落ちた11組で、伊吹は颯馬とともに郁と瑞を待っていた。暗がりに目が慣れてきても、二人は姿を現さない。

「遅いっすねえ」
「もう来るだろ、たぶん」

颯馬は昨日と変わらず気楽に構えているようで、機嫌よさそうに自分の席に腰掛けている。鼻歌でも歌いださん位の機嫌のよさだ。呪われているというのに…。

「おまえってさ、悩みとかある?」
「あー!悩みなさそで平和な野郎だと思ってるでしょ!」
「うん」
「あはは先輩正直~!まあないけど、あんまり」

先輩はどうですか、と颯馬がにこやかに聞き返してくる。そして伊吹の回答を待たずに。

「先輩は、何か大きな疑問を抱えてるでしょ」

上目づかいに見通すように、そんなことを尋ねられた。

「え?」
「瑞くんのことで」

一瞬呼吸が止まりそうになる。なんだろう。からかっているだけなのか、それとも。表情は読めない。答えに詰まってしまい、完全に流すタイミングを失った伊吹を、見透かすように見つめてくる颯馬。その口元には笑みが浮かんでいる。

「どういう意味だ」
「主将の自分より上手な後輩って、どうなんです?弓」
「…」
「人間の器の大きさで言ったら、そりゃ比べるまでもなく先輩のほうだ。実際、主将つとめるような先輩たちの振る舞いって自分押し殺してると思うもん。チームのため、後輩指導のためって。俺、対外試合見に行ったんです、弓道部の。西校の弓道部に付き合ってた子いたから。そこで団体戦のレギュラーチームで、落ち?っていう重要なポジションを瑞くんが任されてるってきいて。二年生は悔しいだろうなって。主将はどういう気持ちかなって思ったんです。悔しいでしょう?」

何か言い返したいのに、できない。颯馬の目に見つめられると、嘘をつくことが許されないような恐慌に駆られてしまうのだ。否定できない。自分が、瑞を、妬んでいる?