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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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黒闇抱いて夜をゆく 後編 探偵奇談7

INDEX|18ページ/26ページ|

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暴かれた秘密



郁は腕を引かれながら夜の廊下を爆走している。風がぎゅんぎゅん頬を過ぎていく。足がもつれそうになるのを必死でこらえる。もう殆ど引きずられている形だ。

「はや、はやいって!颯馬くん!」
「急がないと逃げられちゃうでしょ」

前方に、おぞましいうめき声をあげながら逃げていく女が見える。何だろう、さっきまであんなに怖かったのが嘘みたいだ。繋いだ手の力強さのおかげだろうか。

「どっち行った?」
「上だよ!颯馬くんの教室!!」

教室に入ると、女は蜘蛛のように四肢を伸ばし、天井に張り付いていた。髪を床に引きずり、うぞうぞと動き回っている。言葉ではないおぞましい声を発しながら。

「ふーん、そのへんにあるの?」

その異様な光景を目の当たりにしても、颯馬は微塵も動じていない。いつものように笑みさえ浮かべ、天井を見つめている。

「もうこんなのおしまいにしよう。俺、怒ってんだよね」

そういうと彼は、ポケットに手を入れて、何かを握りしめた。それを振りかぶったかと思うと。

「おらっ」

綺麗なフォームで投げた。女の張り付いていた天井付近に当たる。ばちばちと大きな音がした。女は地の底から響くかのような悲鳴をあげると、天井板の割れ目から、中に消えていった。髪の毛が最後に、しゅるしゅると消える。人の入れる隙間などない天井に、逃げていったというのだろうか。

「なに投げたの?」
「ん?天狗神社の境内の、玉砂利。裏山から持ってきた」

床に散らばっている玉砂利の一つを手にする。つやつやして綺麗だった。天狗の加護のある、霊力を持った石なのだろうか。

「さてと」

そう言うと颯馬は、机によじ登って女の消えた天井板を調べ始めた。