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覇王伝__蒼剣の舞い4 【第一部完】

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第14話 赤き陰謀


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 『天より下りし神龍、ここに記す。吾が肉塊地に宿りて、地を守護す。吾が魂、人に宿りて覇王とせん。吾が力、今は秘めたり。時きて、一つとならん。』
 四国誕生の三百年前、天から下ったというドラゴン伝説。人として転生し、覇王となり地を制したと今もこの地には語られる。
 
 『ドラゴンが、眠っている』
 四国統一をなした前覇王は、そう云った。
 新たな覇王と共に、ドラゴンは目覚める。天を裂くという蒼い力と共に。
 後の人々は、そう語り継ぐ。
 覇王死後、四国は揺れ動き、人々は覇王を待った。四国の次の覇王を。
 そして、蒼剣もそれを待った。覇王となる者が現れるを。
 地に宿った肉塊が、四散しなければ彷徨わずにすんだのに。一つにならなければ___、蒼剣に宿るドラゴンの意思は、現今も躯を探している。

                ***

 土砂降りの豪雨の後、嘘のような蒼天。
 何もかも洗い流すような、そんな雨だったというのに。
 少女の哀しみを、どう晴らしてあげればいいのだろう。
 「燐さん」
 「私…信じられないんです。あんな方ではありませんでした。人を意味もなく傷つけるような方では決して」
 目に涙を浮かべ、少女は訴えてくる。泣くまいと必死に耐えながら、何かがあるのだと裏切られても愛した男を庇う。
 慰めの言葉も励ましも、彼らには理解らない。
 「慣れてるなぁ」
 何も云わずただ微笑んで胸を貸す青年に、焔が感心した。
 「泣いて構いませよ。耐えるのは辛いだけです。ここには恋愛経験はありませんが、頼もしい方がたくさんいます」
 「うーん、素直に喜べないんだけど。尚武」
 「外れてますか?」
 「…いや…」
 ズズッと、ホットミルクを啜る音と共に、少女の緊張を解いた。
 尚武の胸は、愛した男にとてもよくにて温かかった。
 ___心宿さま。
 残酷な再会は、この空のように幻と消えてくれるだろうか。