夢遊オートパイロット
いや、完全な夢遊状態で動いていた。
まるで夢の中をさまようみたいに……。
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目を覚ますと、殺風景なベッドの上に寝ていた。
「ああ、お目覚めですね。
いかがでしたか? 夢遊オートパイロットは?」
「今のは……夢……?」
「ええ、まだ薬は入れてませんからね。
今体験してもらったように、この薬には強い副作用があります。
自分が寝ているときも、勝手に動くようになる副作用がね」
白衣の男はつらつらと話しながら錠剤を出していく。
今までのがすべて夢だと知り、心から安心した。
これほど心に響く薬の説明はないだろう。
「なので、夢遊ゾンビになりたくなかったら
今見た夢のように使いすぎないでくださいね。
自分がどこまで自分でいられるのか、わからなくなりますから」
「はい、本当に……ほんっとうに身に沁みました。
この薬は便利ですけど、用量をきちっと守ります」
「それはよかった。今後ともごひいきに」
男はぺこりと頭を下げて俺を見送った。
俺はその言葉にくすりと笑った。
「今後ともって、今日来たのが初めてじゃないですか」
男は首をかしげて答える。
「ええ? ずっと前からご利用してたじゃないですか。
常連さんなのに、今さらなに言っているんです?」
作品名:夢遊オートパイロット 作家名:かなりえずき