目黒さんの心霊的事件簿ファイル
「目白くんありがとう、大分助かったよ。いつもより人手が大分少ないからね」
「いえいえ、お互い様ですよ」
僕はテントを設置する際に捲り上げたシャツを元に戻しながら話した。
体育祭まであと1週間、本当なら皆競技の練習をしたいだろうに体操着がテントの設置で既に砂まみれである。
「本当なら皆だって部活とか競技練習とかしたいでしょう。僕は何もやってませんし、練習も面倒なんで」
「いやだって目白くん、君は目黒さんの手伝いとかあるでしょ。役員達が役に立たないばかりに…」
「そんな事無いですよ?!むしろ目黒さんあの人、1人で何もかもやろうとして僕厄介払いされましたからね?!」
「へえ、そんな事もあるんだね。てっきり、秘書的な役割かと」
大体あってる。っていうのが正論である。というよりかは…雑用って感じな気もするけど。
それと、体育祭の練習はあんまりうちのクラスは乗り気ではないので僕が居ようがいまいが皆早々と帰るのだ。
『5時になりました。まだ学校に残っている生徒は速やかに帰る準備をして気をつけて帰ってください』
校舎のチャイムと共に自動に流れるアナウンスが今日の体育祭準備の終了の合図である。
「それじゃ目黒くん、気をつけて」
「ん、さようなら」
春とは言えどもまだ五月。まだ5時と言えども肌寒く、セーターを着用している生徒も少なくはない。
空も青と赤が混ざり合って綺麗な色をしているがこれからもっと寒くなる時間帯だ。
そういえば、目黒さんは夜に気をつけろと言っていた。
これは、つきやすい僕に対しての言葉でもあるが夜は何が起きるかわからないと言った目黒さんなりの心配。
夜は、動きやすい。負の存在なものは。
「…あれ、」
それで気づいたのは自分のセーターどこにやったっけということ。
薄い鞄の中を探っても出てくる筈もなく、恐らくテントの設置をした時に暑いからと脱いで朝礼台の上。
「…やっちまった、なぁ…」
特にセーターなんてなくても良いのだが、朝と帰りの遅くなりがちな今の夜は冷える。
学校から徒歩10分地点。学校から徒歩15分の家。そう考えて走って学校へと走る。
作品名:目黒さんの心霊的事件簿ファイル 作家名:むいこ