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目黒さんの心霊的事件簿ファイル

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「私が目黒を名乗るのと名前を名乗らない理由はそれだけだよ」
「…それだけ、ですか」
「ああ」
「疑問に思ったことはないんですか…?」
「無いよ。私はそれがそういうものなんだね、と受け入れているからだよ」

目黒さんはいつもの表情で、真っ直ぐ語っていた。
その真実に嘘偽りはないらしい。
むしろ、どうしてこんなことを僕に言ったのだろうか。

「…初さんが、そうしたから皆そうするんですか」
「そうだ。初代目黒がそうしたから歴代の目黒もそうしてきた。今後変えるつもりもない」
むしろ、変えてしまったら目黒は滅んでしまうよと目黒さんは言った。

「これを真実かどうか受け止めるのは君次第だ。忘れてしまうのもいいさ。何なら小説のネタにすればいい」
「小説…?…ってえ、小説!?」
ああ、と笑って目黒さんが持っていたのは僕のノート。中身はまだ人に見せられないような話がいっぱい。
「君が書いた物語、なかなか面白いよ?」
「ああああやめてください!それなんていう羞恥プレイですかうわああああ」
「『箱庭の中の駒は永遠に外に出られず死んでゆく、この世界を知らずに』」
「うわあああああああ返してくださああああああ」

目黒さんと数秒に渡るおいかけっこはノートを返してもらい終わった。
ふと窓の外を見ると外の風景の違いにびっくりした。
来た時は青い空で日差しが暑い昼時だったのに今ではもう涼しさ漂う茜色の夕日だ。

「もうそんな時間か。気をつけて帰りたまえよ」
「ええ!言われなくとも帰ります!また9月に!!」


僕は荒々しく鞄をひったくり、ドアを開け閉めした。
落ち着いて生徒会室を出て、冷静になってみれば何故あんな話をしたのだろうと思った。


「あと、半年か…」


その声の発した先は誰にもわからなかった。



心霊的事件簿ファイリング其の五。
→目黒さんの心霊的事件簿生徒会相談室。