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目黒さんの心霊的事件簿ファイル

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目黒家。それは江戸時代から続く歴史ある大きな家だよ。
元々は廃れた武家の残り屑だけどね。

目黒が栄え始めたのは大正時代。
和の日本に洋の西洋が入りこんだだろう?
あの時に文化だけでなく、そういうよろしくない物も入ってきたらしくてね。
政府やらも散々苦労したそうだよ?語り継がれてきた事だから私は知らないけどもね。

そこで出てきたのが目黒の一人娘さ。
名前は目黒 初(はつ)。これが本名かどうかは知らないけれどね。

初は実に聡明な娘で女学校の成績も良かったが人としては残念だったようだよ。
彼女は私と同じ様な能力を持って産まれてきたから目黒家からは隠すように育てられたみたいだよ。
それが綺麗な方向には行かず歪んだ方向に行ってしまったみたいだ。

ところが。
世間ではよくわからないものに脅かされ、被害が絶えず政府もたじたじ。
そこで目黒は初が何か使えるのではないか、と政府に売り込んだんだよ。
そしたらさ。
たちまち事件は大解決大解決で政府も目黒も大喜び!
それ以降、政府も目黒も互いに手を組んでそういうものを倒そうという気持ちがあったみたいだ。


ただ一人、初以外はね。


初としては不愉快以外の何者でもないよねえ。
だって、家からは隠されいい時だけ連れ出されたと思ったら政府に道具のように扱われるだなんてさ。
自由も無いし、政府からのお金は全て目黒のもの。初に何も利益は無かった。

そんな時、初は恋をしたんだ。
歪んでる故の純粋というか純粋ゆえの歪みというか。どちらかは私にも知らないけれどね。
政府の一番偉い人が目黒に、初に挨拶しに来たんだ。
絶世の美男子と聞いたよ。初だって女だからね。恋だってするさ。

頭のいい初は考えたんだ。
“この人の為なら、私は死んでも使われても良い”
恋というのは凄いよ。人を変えてしまう程だからね。


そして初はその人の為に頑張ったよ。
でも時代は残酷だね。
政府の一番偉い人に奥さんはいるし、その偉い人も絶世の美男子だからね女たらしだ。
初は嫉妬もしたよ。人間だからね。でも耐えられたのは、傍にいることで満足できたからだ。

でも、その恋をしていた人が亡くなった。
遠い地で遠くからの射殺だ。
今の医療では治っただろうに。かわいそうに。

初はこの時自分の能力が惜しいと思ったそうだよ。
何故自分には、つきものをおとす能力しかなく人を守ることができなかったのかと。
死にたくなったそうだ。そりゃ恋して傍にいるだけで幸せだったのにもう傍に居られないんだ。
死のうとしたらしいけどね。目黒からも政府からも生かされてしまっては自分は自分で無くなる。
そんなことから、初は自分の名前を捨て目黒と名乗った。
それは目黒の頭首であることと、能力を持った人間であることを証明する名前。
目黒として扱われるなら、誰も自分を見てくれないなら。名前を捨て、目黒でいてやるという初の心意気だ。
それは今でも尚続いている、初の呪いだ。

しかし初…初代目黒は死んだ。自殺だ。
部屋の柱に紐をくくりつけ、首吊り自殺だ。
その後、目黒は初代目黒が居なくなったことで目黒は用済みとされたよ。
それでも次の目黒が産まれたよ。まるで、栄えの象徴だと言われた。
目黒が生まれれば政府からの礼金という名のお金が入るんだからそりゃ目黒も栄えるさ。
ただし、能力を持って産まれる子は全員女の子だったけどね。

幼い頃から目黒としての素質がある子供は目黒として育てられ、目黒の代に因んだ名を付けられる。
初代目黒は初、二代目目黒は風(ふう)、三代目は山(さん)。
皆、初代目黒のように育てられたさ。目黒の歴史に始まり、初代目黒の性格や容姿に似させた。
元々の自分を殺してね。そうでなければ、目黒は栄えずに滅んでゆく。
つまり自分達も生きてはいけない、とわかっていたからね。

それは時代が変わっても目黒は変わらなかった。
つきものおとしをして。日々をすごす。
終戦後暫くしてからは3年間、と定められたけどね。流石に青春は過ごしたいしね。

しかし歴史は繰り返すよ。
何度でもね。


「そして私は、第三十代目の目黒だ」