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目黒さんの心霊的事件簿ファイル

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「おや、目覚めたかい目白くん。おはよう…と言っても、もうこんばんはに近いこんにちは、かねえ」
「…僕、何処にいますか」
「此処が君の生きてる場所であるならそうだな…学校のプールサイド、というべきかな」

だるい体は横になっていて、ゆっくり起こすと目黒さんは白いタオルで髪の毛を拭いていた。
僕は自分の口から流れる水を排水溝に流した。

「まったく。君が役に立たないから私が飛び込む羽目になったじゃないか」
「水は、駄目って言ってませんでしたっけ」
「泳ぐのが駄目というだけで長時間潜水はできるが?」
「…ですか」
「うむ」

何だかんだ言って、目黒さんはやっぱり凄い人だと思う。
泳げないのに、潜水はできるって…。


「あれは私にも詳しくわからないが…低級霊、所謂雑霊が集まった結果だろうな」
「雑霊って…?」
「わかりやすく言うと成仏できずにそこに漂ってる霊、の事かな。生霊を含める場合もあるみたいだが」
「…可哀相に」
「それを助けるのが私達だ。“わかる”のは私達だけなんだよ目白くん」
目黒さんはプールの水を流し始めた。これは彼らを解放する儀式なのだ。
無事に彼らが眠れるように、と願いをこめた儀式。
それは祈りに近い。ちゃんと助けることができたのだろうか、と疑問を抱きながら目黒さんは常に歩くのだ。


誰にも弱みを明かさず、彼らを助ける事をしながらも。




後日、プール開きは無事に開かれたが僕はプールの授業中ずっと暗い顔だった。


心霊的事件簿ファイリング其の四。
→目黒さんの心霊的事件簿プール棟相談室。