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目黒さんの心霊的事件簿ファイル

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「やあ目白くん、ごきげんよう。土曜日曜はどうだった?満喫したかい?私もどこか行きたいよ」
「相変わらずですよ目黒さん。友人に連れられて散々です。どこにも行きたくないです」
屋上の扉を開けば目黒さんはいつもどおり柵にもたれかかって、空を見上げていたが此方を向いた。
水色のスカートが風に揺れ、空の色と同化する。綺麗に切り揃えられた長く美しく輝く黒髪とまだ肌寒い時期に必須のクリーム色のカーディガンも揺れる。
今日は何時もより風が強く、目黒さんは風が吹く度に乱れる黒髪を鬱陶しそうに耳にかきあげた。
僕は目黒さんとは数十センチ離れて、柵にもたれかかった。
「今日は風が強いですね」
「ああ全くだ。私の美しく綺麗な長い黒髪が風に揺れるのは構わない。だが痛めつけられているようで気分が悪い」
目黒さんはまるで西洋から送られてきた人形のように白くて細い。それなのに顔はまるで市松人形のように美しい黒髪を腰まで伸ばし、気の強そうな顔つき。着物を着せて口を動かさず動かなければ等身大日本人形のような美しさなのに口を開けば残念な美人だ。
目黒さん自身も自分が美しいということに自覚はあるらしく、その上文部両道。その美貌故に色々な輩が後ろを付いてくることが悩みだそうだ。
しかしそれ以前に、目黒さんの性格と口調から人間関係があるのは僕くらいな程、彼女の性格には問題がある。
「さてと目白くん。今日もいくつか連れてきてるね。何処に行ってきた?」
先日、友人に連れられて神社に行ってきた。1人じゃ怖いから着いて来い、と。怖い物見たさは恐ろしいことだということを教えてやろうかと思ったくらい。実際、そこには僕にしか見えないものがうじゃうじゃいて例えるなら、青信号のスクランブル交差点。
目黒さん曰く、僕は見る事しかできないけど普通の人より、異端を惹きつける何かがあるらしい。それは目黒さんにもわからなくて気持ち悪い、と言っていた。
僕が口を開こうとした途端に目黒さんは片手を突き出した。
「嗚呼いい、いいよわかってる。どうせ君の馬鹿な友人が君を連れてよくない所にでも行ったんだろう」
「…大正解です。大当たりです」
「君も友人はちゃんと選びたまえ。普段はアレだけど根はいい子なんだ、っていうのは言い訳に過ぎないよ。」
そんなことを言われても。幼稚園の時からの友達を別れろというのか。それは何もひどいのでは。
「ああ安心したまえ目白くん。何も別れろとは言わない。友情も愛情も好きに楽しんで好きに悲しめばいいさ」
「だから目黒さんは友達も恋人もいないんですね」
「私はこの性格を直すつもりも無いし、友達はともかく、恋人なんて面倒くさいからね」
そう。目黒さんは一言で言えば残念な美人なのだ。容姿端麗、文部両道。笑顔で振り向けば下駄箱にはラブレターがいっぱいだろうに性格が、悪い。この通り、冷めていて何かと偉そうな雰囲気で口が悪い。口が悪いが性格が悪いに繋がるかどうかとして、目黒さんは毒舌なのだ。その上、実際に学校を支えてる人と言ってもおかしくはないから偉そう、ではなく実質偉い。
「いいかい目白くん。人間は1人では生きていけないとは言うけれど人間頑張れば生きていけるんだ。努力なんだ。努力を常に怠る人が1人ではいけないんだ。やれ休み時間の女子の集まってのお手洗い。男子集団の行動。お前等は蟻の群集かと思ってしまうんだよ」
「まあ…かくいう僕も集団は苦手ですけどやっぱり1人は怖いですよ」
「だから君は私の隣にいるのか、目白。変な話だ」
彼女は才女故に常人じゃ理解できない発想。それは目黒さんの育った環境と、とんでもない思考が出しているのだろうか。
僕には理解できない。

「人間は、人と馴染み過ぎたのだよ。だから独りが嫌と喚くんだ」

そう目黒さんは呟いた。
彼女は、人には成れない。そんな表情をしながら。