目黒さんの心霊的事件簿ファイル
「ということです」
「ふむ……」
目黒さんは生徒会室で役員が持ってきたであろう資料に目を通していたがそんなもの、と放り出して僕の話を聞いていた。
生徒から聞いた話と僕が誰かから突き落とされ階段で転んだという話を僕は喋った。
「誰か悪戯でもしている人がいるんでしょうかね?もしくは、犯人がいる…とか」
「そんな馬鹿なことがあるかい。現に君は誰かに突き落とされた、と言われたが周りには人が居たんだろう?」
「はい、確かに居ましたよ」
「なら何故、誰も犯人の顔を見ていない?」
「…僕が浅はかでした」
「それに、床は濡れていてそれで滑った、って近くに居た奴等は騒いでいたからな」
「はあ」
「…奴は近いかもしれないぞ」
目黒さんはいきなり立ち上がって、黒髪を揺らした。
付いてこい、と言わんばかりの風格で生徒会室を出て、僕は目黒さんの3歩後ろを歩いた。
別に大和撫子とかそういうことじゃないけど、ただなんとなく、今の彼女には近付きたくない。それだけだ。
目黒さんは学校の倉庫にある赤い傘とビニール傘を引っ張り出して、ビニール傘を僕に渡して校舎を出た。
自分の白い上履きを気にせず、彼女は歩いた。
目的場所は、花壇だと思う。花壇には一応コンクリートの上にあるから上履きは大丈夫だと思うけど…。
僕は念の為、靴を履き替えて急いで目黒さんの後をついていった。
4つ横に並ぶ花壇だが、明らか1つだけ三角コーンが立てられててテープで入れないようにされているのがあった。
それは雨が降っている中、遠目からハッキリわかるくらいの赤のコーンと黄色と黒のテープが悪目立ちする。
目黒さんは赤い傘を差して僕は遠くからビニール傘を差して見ている。
己の感が、そうさせているのか自分からそうしているのかなんてわからなかったけど。
目黒さんはコーンを蹴飛ばし、テープを手で引き裂いて放り投げた。
生徒会長がそんなことしていいのかっていう気分になったが今は目黒さんのやっていることを見ているしかない。
その次に目黒さんは傘を持ってくる時に借りたであろう小さなスコップで花壇の土を掘り起こした。
ざっくり、さっくり。ざっくり、さっくり。
音は次第に硬いものから柔らかいものになっていく。
カンッ。
金属にでも当たったかのような音が鳴った。
目黒さんは泥水が爪の間に入っても構わないように手で探り当て、お目当ての物を見つけたようだ。
「…あった」
そこにあったのは、動物のような頭蓋骨だった。
作品名:目黒さんの心霊的事件簿ファイル 作家名:むいこ