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目黒さんの心霊的事件簿ファイル

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あの事件から、数日が経って体育祭まであと一日になった。
相変わらず体育祭の準備は苦労と多難の多さに挫けそうになったが一日準備でなんとかテントは張り終え、マイク等の音響設備もできた。
午前の作業は終り、午後はグラウンドの整備だけで、それは委員会や生徒会でやるからもう帰っていいと言われた。
しかし目黒さんの事を役員の人に聞いても朝から見てない、の答えしか返ってこない。
目黒さんが何か役員に口止めしている?と思ったが彼女はそういう面倒な事をする人ではないから違うと思った。

僕は真相を確かめるために目黒さんが居そうな場所を探した。
屋上、校庭、花壇、プール棟、生徒会室、部室棟、体育館、保健室、ホール、教室、図書館。その他。
探した所に目黒さんの姿はなかった。すれ違いになったか、行っていない所にいるか、もしくは学校に来ていない。
目黒さんが学校に来てないことは恐らくない。授業は受けないけど学校にはちゃんと来る人だ。
『生徒の模範となるのだから、学校に来なくてどうする』と偉そうに言いつつも授業には出ない人だ。
探してない所、といえばこの時期は虫が出て危ないから近付くなと先生に言われたグラウンドの裏は探してない。
そこには目黒さんが供養してる墓がある。それを知っているのは先生と目黒さんと僕だけ。
でも、その場所を知っているのは、目黒さんと僕だけだ。

雑草を掻き分け、踏み越え、手を傷つけないようにと長袖シャツの袖を折っていたのを下ろして長くして。
袖から指が見えるか見えないかくらいにすれば所謂萌え袖、というものが完成。
そんなことを気にはせずに歩いていけば鼻につく線香の匂いが不思議と心を落ち着かせた。
以前目黒さんに何故ああいうものを供養するんだ、と聞いたことがある。
その言葉が、僕にはとても衝撃的で、目黒さんと一緒にいる理由であり、彼女の魅力的な所に惹かれた。

『人とは限らないけれど彼らは、無慈悲な死に方をしたんだ。その結果が私たちに被害をもたらす。悪意はなくとも。ただ己の欲求を満たすために、未練を残したり、残酷な結果になったのが彼らだ。私たちは人間だ。人間は人間に相談するなり手助けが必要だ。しかし彼らは単体でしか動けないのがほとんどだ。それを放置しておいて被害を受けて文句を垂らすのは私たちだ。あまりにも惨いと思わないか?自分達が殺したり、殺させたようなものを被害を受けて文句を垂らすのは。可笑しいだろう?』


『だから視えたり聞けたり話したり触れたり感じたりできる私たちが、助けてやらないといけない』


『それに。彼らは生前普通の人間だったというのが多いし恐らくちゃんと供養はされていない。だから私がするんだ』
『…1人で、ですか?それって、大変じゃないですか?』
『そうか、君も微弱ながらわかるんだよな。…よろしい、ならば私を手伝わないか?』
『僕で、いいんですか』
『少なからず、私の先程の話を茶化さず聞いてくれたのは恐らく君が初めてだよ』


『目白くん、君が初めての私の理解者だよ』


あの時の目黒さんは、まるで彼女が本当にそのようなものかと思うくらい生きている感じがしなかった。
肌の白はまるで紙のように白を通り越して灰色のように見えたし、目もまるで死んでいるかのようだったし。
今となっては偉そうな姿は変わらないけれど、随分と容姿が人らしいように見える。
その代わりに、色んな物を惹きつけるようにはなったみたいだけれど。


いた。


まるで菩薩のように、笑いはしないけれど優しさを含んだ瞳を閉じた表情で手を合わせ膝を突けず座る彼女が。
頭には包帯を、頬には大きな絆創膏。制服で隠れて見えないが恐らく体とかも青痣の痕がけっこうあるだろうと感じられた。
彼女も気づいたのかのように此方を見ては、一瞬睨んだがすぐにいつもの表情になる。
「よく、わかったね目白くん」
「何処を探してもいなかったからここかな、と思ったんですけど」
「もう少し早く帰ればよかったよ」
「そんなに、嫌ですか…僕がいるの」
「君は悪くないよ…ただね、目白くん」


「君は少し、危なさ過ぎる。今回のは」

「は」

声を漏らせば、脳に酸素が送られ体が正常に動いた気がした。
僕はただの、目黒さんの心配を無視していたということか。
そうだろう。だって夜には出歩くな、と言われていたのに関わらず夜に出歩くわ目黒さんには迷惑かけっぱなしで。

「次君があれに会えば恐らく命はないと思う。だから、君は今回休んでていい」
「…目黒さん、あの…」
「なんだい?目白くん。私はそろそろ戻らなきゃいけない」

「あれって…これですか」
なんか、足元にぎょろりと目をひん向いて鎌もってそりゃもう18歳未満は見ちゃ駄目です!みたいなのがいるんですが。

「…特技、つかれやすいに変えた方がいいんじゃないか?」
「どんな特技ですかそれ」
「そのままだよ目白くん」
「そんな特技嫌ですよ目黒さん!」

狭い道幅なお陰でかろうじて手だけが足についている。
ひっぱって外に出そうかのようにずりすりと左足をひっぱってくる。なかなか強い。
鎌はなんか黒いのとかこびりついていかにも何年も使ってますみたいな感じ。
お前はそれで何を取ったんだって聞けるもんなら聞いてみたいが聞ける余裕があったら多分こうなってないと思うんだ。
「ひいいいめーぐーろーさあああん」
「男が泣くな喚くな騒がしい。ああもう面倒だ」
「面倒!?面倒って何ですか!貴女巻き込んでいて何を言うんですか!」
「君の方から首を突っ込んだものだろう!こっちが聞きたい!」
「…すみませんでした」
僕はもう外に出されそうで、必死に学校と公道を隔てる策に掴まる。古くてぎしぎし言ってるけどどうか抜けませんように!
「目白くんいいか?手を離すなよ、離したら君は多分死ぬ」
「納得がいく話がもうなんか怖いんですが!」
「実際私も怖いというか嫌だもん」
「もん!?もんってぶってもだめですからね!」
「ちっ、わかったか…」

実際貴女、そんな口調じゃないし使わないでしょう。

目黒さんはポケットの中に入ってた小さな瓶をスカートのポケットから取り出し、コルクを親指で弾いてそいつに当てる。
少し怯んだが僕の足を離すようにはならないみたいだ。むしろ、ひっぱる力が強くなってる気がするんですが。
そして目黒さんは瓶の中に人差し指を入れて粉をつけて舐める。そして残りの粉を僕にぶちまけた。
口の中に入ったが…これ、塩だ。しょっぱい。あと、荒塩なので若干痛い。
しかし足元にいたそいつはスッといなくなった。


今日も僕に憑いたものは、おとされた。