聞く子の約束
卒業まで試験監督のバイトも都合がつく限り、すべてキクちゃんと一緒にさせてもらった。ランチは会場の学食で食べることもあったけど、他の試験関係者からも変に思われないように、節度を保った。そして、大学生活での最後の英語検定試験があった。
今までずっとバイトで会場にいたから、受験したことがなかったので、キクちゃんは、
「一回受けてみたら?」
と提案した。
2級以上の試験にはヒヤリングテストがあるが、僕はそれに自信がなかったのでずっと受けないできた。しかし、
「私がヒヤリングの試験官をするから、多少ダメでも合格にしてあげる」
などと、とんでもない誘惑をしてきた。僕はこの悪魔のささやきに乗ってしまった。
それならばと無理して準1級を受験した。ペーパーテストはパスできた。そうすると、ヒヤリングテストを受ける権利が二回分もらえる。一回落ちてもヒヤリングだけ半年後に再挑戦できるのだ。
ヒヤリングテストは、試験官と1対1で録音された英語の音声を聴いて、その内容について質疑応答するというものだったが、僕はチンプンカンプンだった。ほとんどまともに答えられなかったので、さすがのキクちゃんも、
「ダメだこりゃ。半年後にもう一回受けよ」
と不合格にした。
僕はものすごく恥ずかしい思いをした。ものすごく、ものすごく、ものすごくだ。