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かいなに擁かれて 第三章

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『お前の身体凄くいいんだからさ、それにプラスして男を悦ばせるためのテクニックのひとつくらい早く覚えろよ。毎回同じ恰好でオレの下でキュウキュウ鳴いてるだけじゃオレもいい加減に飽きてくる。爪くらい伸ばして綺麗に飾った指で淫らに悦ばしてくれよな。お前って全然分かっていない女だな』
(ワタシはいったいアナタの何なの? 全然分かっていない女……)
悲しくなって目が滲んでなにも視えなかった。
 徹は玄関に向かいながら、振り向きもせずに云った。
『今夜は帰らないからな。これから打ち合わせだ。ビッグになってやるから楽しみにしとけよ』
このオトコはまだライブのためのリストを書こうとしているのか。
書き出すだけでは、望みは、もう、叶わない――。
〈爪くらい伸ばして綺麗に飾った指で淫らに悦ばしてくれよな………………〉
 なにを――分かれというのだ。
――アナタに何が分かる。
この手は、オトコを悦ばせるための――――玩具なんかじゃない。

スタインウェイの前に頭を項垂れて浅い眠りに落ちていた魅華に、天上から一条の光が射しこんだ。天空からは無数の真っ白な柔らかな羽がひらひらと舞い降りた。
一条の光りは真白な柔らかな羽と相まって荘厳の輝きとなり魅華に降り注いだ。
満ち溢れた輝きはゆっくりと魅華を擁き始め、全てを包みこみ終えようとしていた。
その時だった。
耳朶を劈くような轟音が轟き、魅華を擁き包みこもうとしていた輝きがすぅと消えた。
はっとして魅華は項垂れていた頭をあげ、リビングの壁の時計をみると、午前5時を少し過ぎていた。
誰かが、今にも打ち破れそうなほど、玄関ドアを狂ったように激しく叩いている。見えない恐怖が魅華を襲った。

両手で頭を覆い、耳を塞ぎ、恐怖から後ずさりビングの隅に小さくなって震える魅華。
ドアは激しく打ち叩き続けられる。
 無秩序に打ち叩き続けられるドアの向こうから怒鳴り声が混じって聞こえた。
『早く開けろ! バカヤロウ! 魅華! さっさと早く開けろ!』
 トオル……。
 膝に力が入らない。やっとの思いで立ち上がり、今にも倒れそうになりながら廊下の壁に寄りかかりやっとドアの施錠を解いた。
 早朝の廊下に乾いた音が響いた。
その途端、外側からもぎ取るようにドアが引かれた。
『バカヤロウ!』
作品名:かいなに擁かれて 第三章 作家名:ヒロ