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かなりえずき
かなりえずき
novelistID. 56608
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内臓をUSBで付け替えちゃえば?

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普通の人は気付かないと思うが、
自分のうなじの後ろにUSB端子があることを知っているだろうか?

俺も知ったのはつい昨日ことで、
髪を洗っている最中に指先に違和感を感じて気付いた。

パソコンに使われている端子を差し込もうとしても
うまくかみ合わないのでネットで調べてみることに。

「内臓USB……そんなものがあるのか」

ネットの情報から、専門店へ行ってみることに。
店内には取り付けても気付かないような
小さく、肌になじみそうな色のUSBが並んでいた。

「あの、ここに内臓USBがあると聞きました。
 ここに並んでいるものがそうですか?」

「ええ、そうですよ。
 見たところ、初めてのようですね。
 でしたら、この『肝臓USB』なんてどうですか?」

「肝臓……?」

見た目は普通のUSBメモリ。
さっそく髪を上げて、うなじの後ろに差し込んだ。
別に何か変わった感じはしない。

「あの……これ、なにか変わりました?」

「まあ、特別な変化があるわけじゃないですけどね。
 今あなたの体には肝臓が2つになりました。
 いくら飲んでも二日酔いになりませんよ」

「えっ!? 本当ですか!?」

その夜、友達と実験もかねて派手な飲み会を開いた。
翌日になると友達は誰一人欠けることなく二日酔いの餌食となったが、
俺はケロリとしていた。

「お前……酒弱かったはずじゃオロロロロ……」

「肝臓が2つあるからな!!」

なるほど、これは便利だ。
お酒が弱くて避けていた会社の飲み会にも参加できる。
しかも、酔いつぶれないというオマケ付き。


それから、会社の飲み会には全部参加し、誰よりもいい飲みっぷりを披露した。
人間関係なんて簡単なもので、
一緒の空間での時間を増やせばあっという間に溶け込むことができた。

その結果、俺の昇進は誰よりも早かった。

「それじゃこの仕事は君に任せよう」
「君ならやってくれると信じてる」
「期待しているよ」

「え、ええ……」

昇進し、重役にも顔が利くようになったが
逆に親しくなりすぎたのもあり仕事を多く頼まれることに。
きっと俺が一番仕事を頼みやすいのだろう。

とはいえ。

実績を残して出世したわけじゃないので、仕事はこなせない。

「はぁ……これじゃこれからずっと残業だよ……」

悩んで追い込まれた俺の頭には、あるアイデアを閃いた。
すぐにUSB専門店へと向かった。


「脳USB? ええ、もちろん、ありますよ」

「やっぱり!!」

店員は脳USBを出すと、他とは一桁ちがうその値段も気にせず購入。
脳がもう一つ増えれば、仕事の効率も数段アップするに違いない。

「あっ……端子がない」

USBを買ったはいいが、刺す場所がないことに気が付いた。
今更、肝臓USBを取り外しての生活はできない。
困っていると店員が助け舟を出した。

「お客さん、人間の体にはUSB端子がいくつもあるんですよ。
 普通に生活していると気付きにくいですがね。
 良ければ、全箇所教えてあげましょうか?」

「お願いします!!」

店員に新たな端子の差し込み口を教えてもらった俺は、
そこに買いたての脳USBを差し込んだ。

脳が1つ増えたことで、今までにないほどの計算力や思考力がついた。
それは仕事にもダイレクトに影響した。

「いやぁ! 君が処理すると仕事が早いよ!」
「本当に君はすごいね!」
「まさにビジネスマンの憧れだよ!」

上司からは期待と尊敬の目で見られ、
後輩からは憧れと敬意の視線を独り占めするようになった。

「ぬふふ。いい気分だぜ!」

すでに俺の体のありとあらゆる端子は埋まっていた。
肝臓USBに脳USB。
さらに、筋肉USBで身体能力も底上げ。
ワクチンUSBなんかもあるので、カゼすらひかない。

向かうところ敵なしだ。


――ふたたび、USB専門店に入るまでは。


「な、なにぃ!? 第6感USBだとぅ!?」

「はい。今日入荷したての新商品です。
 差し込むと、第6感が研ぎ澄まされて危機予知能力や
 恋愛察知能力、霊力をはじめとする第6感が追加されます」

「欲しぃ!! ください!!」
「まいどありがとうございます」

買って気付いたが、もう空いている端子はない。
体のUSB差し込み口は全部ふさがっている。

「……しょうがない。体からいい匂いのするUSBを外すか」

小一時間悩んだ末に、一番「抜いても差し支えない」ものを選んだ。
二の腕の後ろに刺さっているUSBを引き抜こうと力を加えると……


「あれ? 全然抜けないぞ」

「あのお客様。一度刺したUSBはもう抜けませんよ」

「ええええええ!? そんな!?
 それじゃ、もう俺はこれ以上パワーアップできないの!?」

「噂では体のUSB端子を増設するものもあるそうですが……。
 とにかく、一度刺したUSBは一生ものとなります」

買ったばかりの第6感USBをじっと見つめた。

ああ、なんていうことだ。
もっと早くにUSB増設するものを買っていれば。
もっと早くにUSBが抜けないことを知っていれば。

俺の成長はここで頭打ちにならずに済んだのに……。




家に帰ってからも諦めきれない気持ちが
3つの脳でぐるんぐるんと駆け巡っていた。

「どうにかできないものかなぁ……」

第6感のUSB。
これを俺に差し込むことができれば、
きっと今とは別の世界が見えてくるに違いないんだ。

ここで端子の空きがないからあきらめるなんて、できない。

俺は必死にUSBの専門店を探した。
いつもの店ではUSBの取り外しができなくても、
他の店なら取り外しできるかもしれない。

「ここは……」

行きついたのは、たった1件の体USBの店舗。
独自のUSB開発を行っているとか。

ここなら、普通じゃできない取り外しができるかもしれない。

一握りの期待をこめて店を訪れることに。


「……いらっしゃいませぇ」

店は清潔感のある白色で統一されて、
USB専門店というよりは病院に近い感覚。

真っ先に目を引いたのは、
ガラスケースに横たわる裸の人間がいくつも並んでいた。

「あ、あの……あれはいったい」

「ああ、気にしなくていいですよ。展示用です。
 もちろん生きていません」

「ああ、びっくりしたぁ」

独自のUSBというネットの噂は本当で、
店内に並んでいるUSBはどれも使い道がわからないものばかり。

数字を見ると味を感じるUSB。
風が見えるようになるUSB。
動物と意思疎通するUSB。

どれも変なものばかりだ。
いや、それよりも。

「あの、聴きたいことがあります。
 ここでは独自にUSBの研究や開発してると聞きました」

「はい、そうですよぉ」

「だったら、一度取り付けたUSBを取り外すことができますか!?」

店主はにこりと微笑んで答えた。



「無理ですねぇ」



俺はがっくりとうなだれた。



「でも、体のUSB端子を増やすことならできますよ?」

「えっ!? 本当ですか!?」

「はい。端子の数は今の2倍になります。
 お値段は張りますが……やりますかぁ?」

「もちろんです!!」