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ブラックバイト

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だが、C子の前では常に張り切っているらしい。、
嘲笑を浮かべつつ、自身は怠けながら、
仕事に精を出す俺や、困惑する俺の姿を眺めていた。
「バカが俺の思い通りに働いてやがる。」
人を馬鹿にした態度から、そんな声が聞こえてきそうだった。
他人の優しさとは彼にとって、蹂躙の対象でしかないようだ。


「Dがこんな酷いこと言ってた。」
「俺は全然そんなこと思ってないけど。」
Dに入るのは、
・会う機会の無い人間か、
・既に敵対心を抱いている人間。
要するに、確認される可能性がほぼ皆無な相手である。
自らは善人ぶり、狡猾に、自らの言いたい内容を他人に責任転嫁。
他人のイメージの書き換えはお手の物だ。
姑息に、他人を蹴落とすことで自身の株を上げる。
流石、本業が接客業なだけあって、人心掌握術に長けている。
この人物も嘘の専門家である。キャリアは長そうだ。
頭の回転が速く、姑息に嘘を捻出できる。
まぁ、動揺した顔でバレバレではあるが。


女好きで、
よく出会い系サイトを好んで利用していた。
俺「相手は真剣なんだから、一人に絞ったほうがいいですよ。」
「いや、俺はただ遊べる友達が欲しいだけだから。」
恐らく、結婚相手でなく、ターゲットを友達としたのも、
ハードルを下げることで、多くの女性を捕まえる為だろう。
しばらくすると、
「俺モテるだら!」
5、6股をかけた付き合いが始まる。
だが、そのうち、1人、2人と減っていき、
「もう、俺の人生この子に賭けるから!!」
数日後には、失意の果てに、ゲームや株に没頭し、現実逃避。
また、一か月もすると、別のサイトに登録。
「俺モテるだら!!」
そして同じ繰り返しである。
「俺、この子のために心機一転頑張るから!!!」
振り回された女性達が可哀想だ。


その当時、名前を間違たか何かで、
ある女性に激怒されたらしい。
そこで、謝罪文を作成し、
俺に見せてくる。
確かに非の打ちどころが無い、見事な出来栄えだ。
「俺、嘘上手いだら!!」
そこに表れるのは、
相手に対しての申し訳なさではなく、
嘘の自慢である。


奥さんが重篤だから、
こんなに性分が曲がってしまっていても仕方が無いか。
そんな幻想は脆くも崩れ去った。
この女癖は元かららしい。
この女たらしな性格と、度重なる嘘が、
奥さんが倒れた原因でもあるらしい。
正直、そんな人間に騙されるほうが不思議だ。


重度の障害を持つ奥さんを、
「月曜はドライブに連れて行ってるから。」
ところが、
「最近、ドライブに行けてない。」
最愛の妻よりも優先順位が高い用事が、そんなに頻繁に存在するのだろうか?
奥さんの洋服の買い物に付き合うと、
「この型の服はあんまりないから、どうせ汚れるし。」
最愛の相手のために購入する洋服は、数百円の古着である。


「これは内緒だから。」
この人物が相手を味方に取り込む時の常套手段である。
秘密を共有することで、仲間意識を駆り立てる。
その肝心の秘密は、恐らく誰にでも話している。
「誰にもしゃべるな」
同じ内容でも、誰も話さないから、秘密として成立する。
「俺には奥さんが。。」
「精神科で薬もらってて。。」
不利な状況に陥ると、この手の話が始まる。
どうやら、この人は、
内緒話の共有や、同情を誘うことを
武器として、意識しながら、利用しているように見える。


どうしても取り繕えない程の状況に追い込まれると、
最終兵器がある。
病に伏せる奥さんだ。
「ちょっと、病状が悪化したから」
数週間姿をくらます。
姿をくらます直前には、必ずこの人物の失態がある。
そして、これでもか、これでもかと事情の説明をまくしたてる。
人が嘘をつくときには、必要以上に熱がこもるものだ。
その休職期間にオーナーが、ふと、
「あいつにしばらく来るな!って言った。」
失言したと思ったのか、すぐに話題を変える。
やはり、全てが芝居らしい。
時間。
どんなに立腹していても、
たいていは時間が解決してくれる。
うまく利用したものだ。


俺が、自分の至らない点を認め、
メールで申し訳ないと謝罪文を送ると、
「えっ、肝心の内容送られてきてないけど。」
謝罪を再び催促する。
ほぼ間違いなく嘘である。


職場に来ると同時に、
「オイ、お前の自転車倒されとったぞ。
誰かに恨み買ってるんじゃないか。
俺が直しといてやったぞ。」
自転車が倒されていたことは、年1回程である。
それも、大風の時、自然現象である。
この会話が同じ週に2回。
何故か、この人物と俺が同じシフトの日のみである。
恐怖心でも植え付けたいのであろうか。
そして、自身は善人の振りである。


ある日、蛍光の派手なタスキが間接的にプレゼントされた。
老人しかつけないようなタスキを着用した不格好な姿を想像して、
ニヤけながら100均で購入してきたのだろう。
上手いものだ。
お前の為だと、優しさの中にイジメを隠蔽する。


「今辞めるとか、何考えてんの?
新しいバイト育つまで見守る責任あるだろ?
今までの恩を仇で返すつもりか?」
「これから社会で生きていくには重要なことだぞ。」
「お前のためを思って。。」
ブラックバイト以外の何物でもない。


お前のため?
聞いてあきれる。










店長はというと、
「上司に逆らうなんておかしいでしょ。」
裏で「使い物にならない。」との
自身に対する誹謗中傷を知ってか知らずか、
古い考えを頑なに固辞している。
普段は人当たりがよいが、
こいつはもう辞める人間と判断すると、
愛想も会話もあったもんじゃない。
「この日シフト入ってくれる?」
「お願い。お願い。」
わかりました。と頷くと、
一瞬で、さっきまでの感謝など全くの素知らぬ顔。
俺がバイトを辞める日が近づくと、呪いの文字を事務所に張り始め、
最終日には、俺の似顔絵を描いた呪いの人形が、至る所に貼付されていた。
もし、犯人が店長でなくとも、あれだけの数の人形に気づかない筈はないだろう。
恐らく客を装った上司、その前で、
「あなたの将来が明るいことを願ってます。」
白々しい言葉を頂いた。
一か月程前までは、悪人ではないと思っていたが、
今は、流石にそうは見えない。


「ちゃんと仕事しないと殺すぞ!」
という内容のメールが店長からある従業員に送られた。
送り主は偽装出来るので、
誰の犯行かは、監視カメラや、送信記録など参考にしないと不明であるし、
その話を聞いた時点では、オーナーが怪しいと思っていた。
しかし、今では、店長自身が犯人でも全く不思議には感じない。


客に扮装する関係者らしき人物。
よく見かける。恐らく常連さんの中にも。
ある日、
「あの店員の接客態度がなってない!」
お客さんからわざわざ指摘された。
その数分後。
「あの店員の接客態度がなってない!」
別のお客さんからのクレーム。
全く同じ内容と、全く同じ言葉。
確率を考えるとあり得ない。
その当時。1年程この職場でお世話になってからの話である。
その1年で一度も経験の無い出来事が、10分足らずで二度も起きる。










「新しいバイト辞めさせるなんて最低!」
作品名:ブラックバイト 作家名:yusuke.N