ブラックバイト
普段一緒に仕事しているおばちゃんが、ふと口にした。
俺がバイト辞める数週間前くらいに、新人のおじさんが入ってきた。
身を守るためのアドバイスとして、
「嘘と対立しかない。」
「人によって話が違う。ダブル、トリプルスタンダードが当たり前だから、
その時の相手に合わせるといい。」
「この職場は楽しいよ。」なんて詐欺まがいの事はせず、
包み隠さず、マイナス面を重点的に語った。新人さんの身の安全を思って。
何より、この職場で苦労するのは人間関係しかない。
仕事での苦労など無いに等しい。
また、上記のオーナーの友人への対応法を、
新人さんに語ってあげてと、おばちゃんに言われたので、
「あの人の話は言葉じゃなくて、顔で真偽を判断したほうがいい。」
ただ、オーナーにしても、プロ役者顔負けの演技をする。
最終的には自分の感覚に頼るしかない。
不自然な出来事をつぶさに観察していく。
只、身の安全確保の為とはいえ、
この行為を癖にしてしまうと、
誰一人信用できなくなる。
その上、己の表情も気にするようになり、顔が強張る。
その表情が誤解を生み、悪循環が始まる。
「新しいバイト辞めさせるなんて最低!」
確かに、この職場では酷い仕打ちしか受けてこなかったので、
この新人さん辞めないかな?と思ったのは事実。
けれど、辞めさせる強制力なんて、何処にある?
そんな権力得た覚えがない。
暗に犯人扱い。
もし、マイナスなアドバイスが不味かったというのなら、
既にマイナスなイメージしか持っていない俺と
同じ時間帯に新人を入れるのは控えるべきだ。
虐待された職場への恩義など、期待するほうが不自然だろう。
急に変更になった最終日に
オーナーがやって来た。喜々とした表情で。
成程。
これから事件が起こる匂いがする。
しばらくして、ヤンキーが来た。
4、5人で入ってくるなり、レジ前で威嚇するよう立っていた。
そのうち一人が電話片手に、作業中の俺に近づいてくる。
不自然に。恐ろしく不自然に。
俺の肩を叩き、「警察呼んで。。」
しかたないので、事務所へと向かう。
オーナーが少し楽し気に「どうした?」と語りかけてくる。
オーナーに警察への通報をお願いし、
再び作業に戻ると、
また同じヤンキーが不自然に近づいてくる。
トントン、「警察呼んで。。」
俺「呼びましたけど」
しばらくして、
「警察呼んで。。」
テメェ!
駐車場の裏手にたまっている、
他の5、6人のヤンキー達に事情を聴きに行く。
俺「何かあったんですか?」
ヤンキー「何も」
店内に戻る俺。
またあいつが携帯片手に近づいてくる。
ドンっ!ドンっ!
商品の棚を乱暴に扱い、態度でそのヤンキーに苛立ちをアピールする。
もう無理だと諦めたのか、
ヤンキーたちは帰って行った。
そして、オーナーがその事件の詳細を確認しにやってきた。
恐らく、この人が俺に恐怖を感じさせるために呼び寄せたのだろう。
俺「ノーコメントで」
「いやいや、警察来たら困るから」
俺「ノーコメントで」
「大事な話だから、真剣に答えろ!!」
真顔を見せるオーナー。
見つめる俺。
しばらく見つめているとオーナーは笑い出す。
ハイハイ。やっぱりね。
そこからも執拗に質問攻め。
只、ヤンキーが来ただけ。
それ程拘る必要など無いだろう。
別に大した才能を持ち合わせている訳ではないが、
身を守るためには、
バカに見せる。出来ない振りをする。
個人情報はあまり話さない。
何故なら、バイト仲間の全員が間者になる可能性を秘めているからだ。
敵の信頼している人間を買収する。
人が身体的に疲労しているところをつく。
人が精神的に不安定な時期を狙う。
古代中国かと錯覚するような
奸計、讒言の数々。
これが日常茶飯事。
Location.Location.Location.
店舗の売り上げなど、努力でさほど変化するものではない。
という諦めからか、
己の箱庭で。素知らぬ顔をして、人をいたぶるのが堪らない快楽。
「美しいものが汚れていく姿がたまらない。」
綺麗なものを破壊するのが趣味らしい。
他人を不幸に貶めて、悦楽に浸る。
シャーデンフロイデ。
嫉妬、怒り、恨みを掻き立てるのが巧みで、
罪悪感を抱かせ、優しさが好物、
本来の仕事はそっちのけで、
他人の不幸を味わう為に、全力を尽くす。
こういう職場を経験すると
誰一人信用できなくなる。
環境は人を変える。
何故この文章を執筆したか。
中国の歴史書でもそうだが、
そういう考えもあるのかと意外と参考になる。
この日記で誰かの災難が未然に防止できるかもしれない。
そう思って、つたない文章を綴ってみた。
バカな悪人はかわいいものだが、
狡猾な、頭の回転の早い悪人は自然災害に等しい。
特に善良な人間程辛い。
同じように奸計をめぐらせて、復讐を企てても構わないが、
そんな事は良心が許さないからだ。
耐える、避ける以外に道はない。
さらに、
悪人が悪事をなしたところで、
いつものことだと、特に表立って問われることは無いが、
善人に少しでも不善があれば、
それみたことかと、偽善者のレッテルを貼られる。
そこからは、善意に基づく行為は全て偽善と判断され、
裏に悪意を潜ませていると疑われるようになる。
自身を含め、完璧な善人など存在しないが、
己が大事にしてきた清明心とは何だったのか。
正しく生きる事の価値を疑うようになる。
こう全体を俯瞰すると、
監視カメラの映像を自由に参照することは困難である。
また、カメラでは確認出来ない事も多いだろう。
つまり、憶測の域を越えることが難しい場合が、多々存在する。
なので、追及したところで、
「証拠は?」
巧みにかわされるだけである。
また、逆に、勝手に悪いイメージを押し付けられることもあるだろう。
監視カメラの映像を上手く加工して、誤解へと導く。
情報とは、伝達法によっていくらでも改ざん出来る。
只の噂話では、確証を欠くが、
画像、映像であれば、事実と認識される。
例えそれが、事件の一部のみの切り取りであっても。
正直さや正義など振りかざしてみたところで、
誰一人同調せず、孤立するのみ。
正義が勝つのではなく、勝った者が正義なのだ。
悪事を諫める人間が誰一人いない職場。
こんな職場が成立しているという事実に、
驚きを隠せない。
狡猾な犯罪者の巣窟である。
こういう組織は、公的権力を行使して破壊する他無い。
それが社会の為というものだろう。
只少し、注意点を明記しておきたい。
・記憶
これは、思い出す時点での感情によって、
いかようにでも捩じ曲げられる。
・相手の行為
どのような行為であっても捉え方次第で、
プラスにもマイナスにも受け止めることが出来る。
これも、相手に対しての自身の感情で決定される。
・上記のような影響を受け、
あくまで偏った個人的見解でしかない事は、理解していただきたい。
最後にこの言葉を送ろうと思う。
どんな辛酸を舐めさせられようが、
一時的な不幸など気にする必要は無い。
何故なら、人生万事塞翁が馬である。