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ねとげ~たいむ外伝 ~in,lunry,story~

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「やったぁぁあぁ―――っ!」
「お姉ちゃんうるさいっ!」
「あ、ゴメン!」
 思わず現実に叫んでしまった。
 気付いた時にはすでに遅し、隣の部屋から茜が叫んで来た。

 気を取り直して画面越しに仲間達と話し合った。
 パソコンの中でローネが尋ねて来た。
「ルナちゃん、どうしたの?」
「ああ、リアルに叫んで妹に怒られた」
「分かる分かる…… 私も叫んだ。今親いないから助かったけど」
「茜ちゃん怒ると恐いっスからね〜」
「ま、何はともあれ、残るはあいつらだけだな」
 テリオはバトル・ダガーをバウス達に向けた。
 
 取り巻き2人が剣を構える。
 一方バウスはしばらく黙ったままだったけど、やがて単眼の仮面で私達を見つめながら言って来た。
『チッ、どうやら貴様達を見くびっていたようだ』
 そう言いながら右手のネガの魔鏡を放り投げるとローネがそれを受け取った。
『今日の所は負けを認めよう…… だが我らはパラディス国と言う過ちを正し、真の理想国家を築く! これ以上我等の邪魔立てをするなら容赦はせぬぞ!』
 バウスはマントを翻すと神殿の奥へと消えて行った。 
 本来なら後を追いかける所なんだろうけど、キーボードを押してもウンともスンとも言わ無かった。
 私達は王国に雇われている冒険者な訳だから王国に協力はしても従う必要は無かった。

 ネガの魔鏡を魔法ギルドに変換して事件は解決した。
 同時に私達もランク3へ進む権利を得た。
 でも私達はあえてゲームをあがる事にした。
 楽しみは明日に取っておいた方が良い訳だし、皆にも都合って物がある。

「ふぅ……」
 私はパソコンの電源を切ると席を立った。 
 部屋を出ると丁度隣の部屋から1人の女の子が出て来た。
 私より短い髪を赤く丸い髪留めで結んだ肩まであるツインテール、上半身には黒い半袖のTシャツの上から赤いノースリーブのシャツの上から白いシャツを着ていて、下はホットパンツと白と赤のストライプのニーソックス姿のこの子は宮崎・茜、私の妹だった。
「お姉ちゃん、終わったの?」
「うん、ゴメンね、うるさくしちゃって」
「そんなに面白いの? ゲームでしょ?」
「結構やってみるとね…… パソコン買ったら茜もやってみたら? 仲間が出来るなら皆も賛成だし、まして萌がいるなら安心でしょ?」
「無理よ、パソコンなんて来年のお年玉貯めないと買えないもん」
「お爺ちゃんに頼んだんでしょ? 入学祝に買って貰えるんじゃない?」
「まさか、そこまで本気にしてないよ」
 茜は苦笑した。
 私のパソコンはお爺ちゃんに誕生日プレゼントに買って貰った物だった。
 中古のデスクトップだけど、お爺ちゃんの知り合いの息子さんがパソコンショップを経営していて、その伝手で安く譲って貰ったらしい。
 ちなみに、茜の誕生日は先日過ぎてしまった為にまた1年間待たなきゃいけない。
「それじゃあ私、お風呂行くから」
「早くしてね、私明日日直なんだから」
「はいはい、私も朝連あるからそんなに長くないわよ」
 私は一階に降りながら手を振った。

 翌日。
 私は何故か目覚ましのアラームより目が覚めた。
 パジャマから制服に着替えて部屋を出る…… 茜は部屋から出て来た様子が無い、1階に降りて玄関を見ると茜の靴がまだある、まだ家を出て無い証拠だった。
 トースターに食パンをセットしてコーヒーサーバーに擂り降ろした豆と水を入れてスイッチを入れる。
 コーヒーが出来上がるとバターを塗ったトーストと一緒に胃の中に流し込んで朝食を簡単に済ませると左手に鞄、右手にラケットを持って肩にかけると表に出た。

 まだ朝早いと言う事で人通りの少ない道路を私は1人走っていた。
 今外に出ているのは新聞・牛乳配達の人、もしくはそれらを受け取るお父さん・お母さん位なものだ。
 さらに珍しい事はまだ続いた。
 何と私が今日1番に校門を潜ったからだった。
 警備員さんに挨拶をすると職員室へ行って部室の鍵を貰った。
 制服からユニフォームに着替えてグラウンドにトンボをかけている時だった。
「あれ、蒼!」
 振り向くとそこには望、唯月、朋香、萌の4人が立っていた。
「みんな、何で?」
 すると望が言って来た。
「何か目が覚めちゃってさ、家にいてもやる事無いから早く来たって訳」
「そうしたら皆とばったり会ったっス〜、すごい偶然っス〜」
「そうね、これも昨日ランク3になったおかげかしらね?」
「まさか…… それより折角私達だけなんだ、皆で練習しないか?」
「あ、良いわね」
「でも先輩達来たら怒られちゃうんじゃない? 勝手にグラウンド使う訳だし……」
「大丈夫っス、蒼や朋香ちゃん達の練習って言えば誰も文句は言わないっスよ」
 萌は怪しく笑みを浮かべた。
 勉強は出来ない癖にこう言う悪知恵は働く奴だ。
 でもそれは私も賛成だった。
 1年(もうすぐ2年)の私達だって思い切り練習はしたかった。
「ま、たまには良いんじゃないの? ハッピーだって許してくれるわよ」
 私が言うと他の連中は微笑しながら答えた。
「さすが蒼、話が分かるぜ」
「それじゃさっさと始めるっス〜」
「萌ちゃん、その前に着替えて荷物置かないと……」
「よ〜し、やるぞぉ〜」
 望、萌、唯月、朋香は部室の方へ向かった。
「ん?」
 するとその時だ。
 ゲームのやり過ぎか、4人の姿がオンライン・キングダムのアバターとダブって見えた。
 目を擦って再度見るとやっぱり制服姿だった。
「まさか…… ね」
 私は肩にトンボをかけながらため息を零した。
 それは3月の初め頃、まだ冬の寒さが残るとある朝の事だった。