ねとげ~たいむ外伝 ~in,lunry,story~
土属性に続いて雷属性を破壊した。
すると私にかけられたローネの魔法が突然解除された。
振り返るとテラー・キマイラの両肩の水晶が輝いていた。
今度はクリスタル・ドラゴン…… 水属性だ。
こいつは魔法の力を吸収して自分の物にする事が出来る、また吸収した魔力に応じて回復もする、傷つけられた腕や体の傷口がほのかに輝いて塞がりかけていた。
でも今のこいつは攻撃できない、まして両肩の水晶は恐ろしいまでに脆い…… 私達は次の攻撃に備えた。
「ったく、本当にコロコロ変わる奴だ」
ルキノが両腕の指を鳴らしながら私の隣に立った。
そんなルキノに私は言った。
「でも漫画のネタにはならない?」
「……ルナ、私の漫画、どう言うのか知ってんだろ」
「はいはい……」
「じゃあ行くぜ!」
ルキノの合図で私達は石畳を蹴りあげてモンスターに向かって行った。
テラー・キマイラの口の中に光が集まり始めた。
こいつのレーザー・ブレスは強力だ。
まともに食らえばゲーム・オーバーは免れない…… だけどそれはまともに食らえばの話だった。
「スキル発動!」
アクセル・スキルを発動させたルキノは赤い光に包まれて瞬時に移動するとテラー・キマイラの右肩に向かって飛びあがった。
私も装備を変更する、物干し竿みたいな長い柄の先端に菱形の鋭い刃が取りついた『鋼鉄の槍』だった。
「私も、疾風突き!」
私は技コマンドを選択する。
私の姿が瞬時に消えて無くなると一瞬で間合いを詰めて飛びあがり、テラー・キマイラの左肩目がけて槍を構えた。
この技は槍装備の時にしか使えない、けどルキノと同じ確実に先制攻撃ができる…… 素早い敵に有効な技だった。
私と違いスキルで間合いを詰めたルキノも技を選択して攻撃に映った。
「飛び蹴りぃっ!」
一瞬身をかがめたルキノは右足を突き出した。
するとルキノの爪先は右肩の水晶を、私の鋼鉄の槍の刃先は左の水晶を粉砕した。
『ギャアアアッ!』
テラー・キマイラは目を見開くと悲鳴を上げた。
大きく体を仰け反らせると口の中に集まったエネルギーは消滅した。
攻撃を終えた私達は地面に着地した。
「ハッ、私達に喧嘩を売ろうなんて10年早いんだよ!」
ルキノは鼻で笑った。
相変わらず口が悪い…… まるで男みたいだった。
私は初めて会った時の事を思い出した。
こいつは私と萌が中学に上がって1ヶ月後の5月の事だった。
私達のクラスに親の仕事の都合で引っ越して来た望が転入して来た。
私服だった小学校とは違い、中学校はセーラー服だったので、当時の望は髪の毛も凄く短くて目付きも悪い…… さながらセーラー服を着た男子の様だった。
その為に誰もが最初は良い印象は無かっただろう…… 正直言うと私もどちらかと言うと『恐い』と言うのが第一印象だった。
しかしそんな印象を破壊したのが他でも無い萌だった。
クラス中が緊迫してると萌が手を上げて『ホントの所は何で転校して来たっスか? どんな能力使えるんスか? 人類破滅でも迫ってんスか?』と言って来た。
こいつには裏も表も無い…… 漫画の影響で転校生=特殊能力+世界の危機と言う展開を気にしてたんだろう、萌の質問にクラス中が硬直…… しばらくすると望が『アホかお前は、私は漫画は描くけど現実と妄想の区別は出来てる!』と言い放った。
途端クラス中の緊張が解けて笑いの渦に包まれた。
以降望はクラスでも人気者になった。
漫画を描けるだけあって確かに絵は上手で、しかもとても面白かった。しかしいつの日かヤオイ系に走ってしまった。
しかも見た目通り気が強く、男子が女子にちょっかいを出していると必ず守ってくれた。
さらに運動神経も良く、男子より人気があってバレンタインにチョコレートを貰ったり、ラブレターを貰うなど日常茶飯事だった。
ただし成績の方はすこぶる悪かったのでテストや高校入試はさすがに苦労した。
何とかして高校に上がり、萌がラクロス始めると言った時に『面倒だな』と最初は断ったけど、萌が『望ちゃんも一緒にやるっス〜、友達っス、親友っス、マブダチっス〜っ!』と胸倉をつかんで揺さぶった。
その後萌は思い切り殴られたのは言うまでも無いが、半ば…… いや、完全に強制だったけど、一旦何かを始めると集中し過ぎて周りが見えなくなる性格の望は初心者でもスタメンに選ばれる事になった。
望本人も『ま、折角の高校生活だしな』と言ってラクロスを続ける事にした。
確かに口が悪くてぶっきらぼうで、口より先に手が出るけど話が分かって付き合いも良い…… 望はこの中で1番優しかった。
作品名:ねとげ~たいむ外伝 ~in,lunry,story~ 作家名:kazuyuki