ねとげ~たいむ外伝 ~in,lunry,story~
初めて攻撃らしい攻撃が効いた事でローネの想像は確信へと変わった。
こいつは強いけどチートって訳じゃ無い、レベルが高ければソロプレイでも倒す事ができる。
「次は雷属性…… 両腕の一撃が来るぞ!」
「大丈夫っ!」
テリオが言うと私は得物を変更する。
両手持ちのアイアン・ハンマーが消えると今度は左腕に鋼鉄の盾が装着された。
するとローネが防御魔法をかけて来た。
「直ぐに消されるけど無いよりマシよ、ディフェンズっ!」
ローネは防御魔法をかけた。
『グオオオっ!』
地響きを立てながら迫ってくるテラー・キマイラの前に私が出ると盾を構えて防御する。
テラー・キマイラの爪が振り下ろされて私の盾とぶつかった。
ただでさえ強力な攻撃を受け続けたから鋼鉄の盾の耐久力が減って亀裂が入った。
多分あと一発攻撃を受けたら粉々に砕けて使い物にならなくなるだろうけど、今は事はそんなの知った事じゃ無かった。
「今よっ!」
私は待機していたテリオに叫んだ。
テリオは私の後ろで技コマンドを選択した。
「今日だけは出し惜しみなしで行くよ、爆雷筒っ!」
テリオの両手の中にダイナマイトが括りつけられた飛苦無が握られてテラー・キマイラに放たれた。
自動的にテラー・キマイラは両手を構えて防御するけど、現在雷属性のこいつは炎属性に弱い。
飛苦無のダイナマイトが両手の装甲に突き刺さると轟音を立てて爆発した。
するともう一度クリック・スキルを発動させて爆雷筒を放った。
「もう一度っ!」
同じ技が選択されると爆雷筒が雨の様に放たれると両手の装甲に亀裂が入って粉々に砕け散った。
「またお金使う事になるな……」
「何言ってるっスか? テリオちゃんあんまりお金使わないから沢山持ってるじゃないっスか!」
「無駄遣いは敵よ」
テリオは目を細めた。
テリオの使われる技は私達と違いストックに気を付けなければならない、道具を補充したり買い貯めしなければならなかった。
ただしテリオは性格と言うか家庭の事情の為にゲームとは言えお金を使うのに抵抗があった。
ジョブが盗賊になったのは結果的に運だけど、お金やお宝が手に入りやすいって事で喜んでいた。
朋香は両親が共働きで、兄弟も7人と言う大家族の為に生活費を切り詰めなければならなかった。
その為に子供の頃から欲しい物が変えず、外食もした事が殆ど無いので食事も自炊し、スーパーや商店街の大安売りや特売日を欠かさずチェックしていた。
朋香も両親の負担をかけまいと中卒で働こうとしていたらしいけど、両親は普段から家の世話ばかりの朋香にバラ色の高校生活を楽しませたいと高校に進学させる事にしたらしい。
ただし家の仕事が忙しくて勉強が出来なかった事もあり、成績がそんなに高く無かった朋香に出来るのは体を動かす事くらいだった。
元々体を動かす事が好きな方だった朋香は推薦で風鈴高校へ入学する事ができてラクロス部に入った。
スタメンに選ばれる事は元々決まってたみたいだけど、家の事もある為にあまり長く練習する事が出来ず、唯月から鉛を入れる事の出来るリストバンドを作って貰ってそれを両手足につける事で普段でも体力づくりが出来るようになった。
それ以来朝練が無い時でも学校に来て1人自主トレをし、雨の日だろうと風の日だろうと1日も体力作りを休んだ事が無かった。
私の家は決して裕福って訳じゃ無い、でも私も茜も基本的に欲しい物は買ってもらえた。
でも朋香はクリスマスプレゼントどころか誕生日プレゼントすら買って貰った事が一度も無い、貧しい暮らしで辛い思いをした事が何回もあるはずだ。
でもそんな事なんか感じさせないくらい強い奴だった。
この中で1番芯のしっかりしてるのは間違いなく朋香だった。
作品名:ねとげ~たいむ外伝 ~in,lunry,story~ 作家名:kazuyuki