ねとげ~たいむ外伝 ~in,lunry,story~
最後の戦いが始まった。
最初に出たのはルキノだった。
両足を揃えてジャンプすると強く握った拳を突き出した。
「正拳突きぃぃ―――ッ!」
ルキノの鋼鉄の爪が空を切る。
すると突然テラー・キマイラの翼が大きく羽ばたくと辺り一面に突風が吹き荒れた。
「なぁ? うわああっ!」
ルキノは風の壁に阻まれて吹き飛ばされた。
地面に叩きつけられて立ち上がる間もなくテラー・キマイラの追撃が放たれた。
大きく体を仰け反らせると口から圧縮した風の砲弾をルキノに向かって吐き出した。
「うわああああっ!」
敵モンスターの攻撃が直撃したルキノはHPを大きく減らされて私達の方へ転がった。
「ルキノ!」
「ならこれでどうだっ!」
テリオは技コマンドを選択した。
「雷塵っ!」
テリオの全身に稲光が走ると左手を広げて突き出した。
すると手の平から金色の雷撃が放たれた。
さっきガスト・ドラゴンの風の砲弾を使ったって事は奴は風属性…… つまり雷属性に弱い事になる。
だけど……
『グオオオっ!』
何とテラー・キマイラは今度は炎を吐き出した。
金色の雷は紅蓮の炎にかき消されてしまった。
「なぁ?」
テリオは驚いた。
今のはボンバー・ラットの火炎放射だった。
すると今度はアルネが前に出た。
「調理をする前に基本な事があるっス!」
こんな時に冗談が言えるアルネが正直羨ましい。
足元に白い魔法陣が浮かぶとルーン・スタッフの先端に青い光が集まった。
「どんな食材でも水洗いっス! めが・あくあすっ!」
アルネの水魔法が放たれた。
水のドリルがテラー・キマイラ目がけて飛んで行く。
だけどテラー・キマイラは両腕を振るうと石畳の地面を砕いて地中に潜った。
勿論アルネの技は不発に終わった。
「この技は!」
私は思い出した。
「食材のクセに生意気ッス! 大人しく洗われて……」
「バカっ! 逃げるんだよ!」
ルキノはアルネに叫んだ。
石畳の地面が砕かれて盛り上がりながら私達の方に迫って来る。
私達は慌てて回避すると私達のいた場所からテラー・キマイラが飛び出した。
テラー・キマイラは今度は私に向かって両腕を振るい上げた。
「不味い!」
私は鋼鉄の盾を構えた。
さらにローネがアイアン・メイスを構えた。
「援護するわ、ディフェンズッ!」
ローネの足元に金色の光が集まると私に向かってアイアン・メイスを突き出した。
すると私の体が金色に輝いて頭の上に縦に矢印の↑が重なったマークが浮かんだ。
これは防御力がアップした証しだった。
私は敵の攻撃を受け止めた。
「ぐっ!」
防御してもHPのゲージが激減した。
こいつは通常攻撃もメチャクチャ強い、だけど私にはこれがある。
「スキル発動!」
私はカウンター・スキルを発動した。
私は鋼鉄の盾を振るって敵の両手を払うとバスター・ソードを構えて飛び込んだ。
「はああっ!」
私の斬撃がテラー・キマイラの体を切り裂いたと思いきや、テラー・キマイラは私の攻撃が当たる瞬間に両腕を構えて防御して私の剣を防いだ。
「くっ!」
私は歯を軋ませた。
今度はアーマー・インセクトの自動防御だった。
あのモンスターの防御力は伊達じゃ無い、攻撃が通ったとしてもかすり傷にもならない。
しかも次の瞬間、その雀の涙…… いや、この場合は蟻の体重程も無いダメージも全く無意味な事になった。
テラー・キマイラは身をかがめると両肩の水晶が輝くと傷が回復してしまった。
だけどそれだけじゃ無い、私にかかった魔法が解除されてしまった。
今度はクリスタル・ドラゴンの技だった。
すると今度は口の中に青白い光が集まると私に向かって光線を吐き出した。
「きゃあああっ!」
光線は私を飲み込んだ。
私の大きくHPゲージは物凄い勢いで減り、HPは0になった。
これで私はクエスト失敗、直ちに退場…… にはならなかった。
0になる瞬間に自動的に発動するスキルが発動した。
それは『デッドゾーン・スキル』と言うスキルで、HPのゲージが0になった瞬間に発動する能力だった。
たった一度だけ、HP1の状態で復活し、クエストを続行する能力だった。
「ふぅ、助かった〜」
私は胸を撫で下ろした。
このクエスト開始直前にこのスキルを付けたおかげで命拾いした。
これが無かったら確実に退場だった。
ただ次HPが0になったらたちまちたちまち退場だ。もう油断はできない。
「ルナ!」
直ちにローネが回復してくれた。
私が戦っている間に他の皆はアイテムで回復していたのでHPはほぼ満タンだった。
でもそれも焼け石に水、今度は風の砲弾で私達に一斉攻撃をしてきた。
「水洗いがダメなら肉たたきっス、めが・ろっくすっ!」
足元に再び白い魔法陣が現れると数メートル先の石畳が砕けて巨大な岩が飛び出して宙に浮かんだ。
やがて亀裂が入って粉々に砕けると鋭く尖った石の鏃となって飛んで行った。
『ガアアアアっ!』
空気の弾丸が石の礫とぶつかって爆発する…… 結果負けたのはこっちだった。
石の塊は細かい砂となって床に落ちたけど風の砲弾は健在だった。
このまま直撃すれば私達のHPは減ってしまう…… するとテリオが目の前に立って右手を足元に突きつけた。
「岩壁っ!」
すると石畳が砕かれて長方形の岩の壁が現れた。
だけどテリオの防御障壁も無残に砕かれてしまった。
何とか風の砲弾はアルネとテリオのおかげで防ぐ事は出来た。
攻撃の合間に隙が出来た事でルキノが反撃に出た。
「今度こそっ!」
ルキノはジャンプすると拳を作った。
だけど敵の攻撃はまだ終わって無かった。
翼を大きく羽ばたかせると羽根の手裏剣がルキノに襲いかかった。
「うわあああっ!」
ルキノは体中を切り裂かれ、HPを減らしながら石畳に転がった。
そんなルキノに私達は近付くとテラー・キマイラが紅蓮の炎を吐き出した。
「「「「「キャアアァァア―――――っ!」」」」」
炎は私達に向かって行くと轟音を立てて大爆発、私達は爆煙に包まれた。
作品名:ねとげ~たいむ外伝 ~in,lunry,story~ 作家名:kazuyuki