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ねとげ~たいむ外伝 ~in,lunry,story~

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 文化祭直後、私達は討伐『走る爆弾魔』と言うクエストを受けた。
 火山に棲息するボンバー・ラットが大量発生し、麓の村にやって来て被害を出しているので何とかして欲しいと言う依頼だった。

 大きくそびえ立つ火山の天辺から紅蓮のマグマが噴き出した。
 本当なら青く広がる空を火口から立ち込める黒い噴煙が覆い隠し、太陽を遮っているので夜でも無いのに辺りは真っ暗だった。
 周囲はゴツゴツした岩だらけで草1本生えていない…… こんな最悪な場所に生息するモンスター達と私達は戦っていた。
『キキィ―――っ!』
 岩の間からボンバー・ラット達が現れ、私達の周囲を取り囲んでいた。
 赤く逆立った毛皮のずんぐりした胴体から生えた3本指の4本の足、真っ赤な瞳と鋭い1本の牙が生えた口と大きな耳、そして長い尻尾の先端に火花を散らしながら私達を取り囲んでいた。
 こいつらは大して強く無い、魔導士のアルネでも杖で2〜3発殴れば倒す事は出来る、こんなの冒険者に依頼しなくても村人だけで何とかできると誰しもが思うだろう…… でも問題はこいつの特性だった。
『キキィ――っ!』
 ボンバー・ラットの1体が飛びかかった。
「くっ、このぉーっ!」
 ルキノは反応的に攻撃した。
 ルキノの拳がボンバー・ラットの顔面にめり込んだその瞬間、ボンバー・ラットの体が閃光に包まれると轟音を立てて爆発した。
「うわあああっ!」
 爆煙の中からルキノが吹き飛ばされて地面に転がった。
 そう、こいつらはある程度のダメージを受けると自爆する、しかも自爆のダメージの方が通常攻撃のダメージより高いと言う厄介な敵だった。
 さらに大量発生の元凶が目の前に現れた。
『シャアアアっ!』
 ボンバー・ラット達の親であるボンバー・ラットM(マザー)が大きく咆えた。
 鋭く伸びた3本爪の逆関節の後脚で立ち上がると口を大きく開けて炎を噴き出した。
 私達は散り散りに逃げて炎のブレスを回避した。
「ネズミのクセに生意気な!」
「しかもこいつも爆発するんでしょ?」
 私は周囲を見回した。
 こいつを倒して爆発したら周囲のボンバー・ラット達も誘爆する、そうなったら敵と供に私達も全滅、クエストは失敗だ。
「ったく、お前が調子に乗って水魔法バンバン使うから!」
「アタシの責だって言うっスか? それならテリオちゃんだってそうっス!」
「確かにね、ここに来るまでモンスターが多すぎたよ」
 テリオも苦笑しながらため息を零した。
 実はボンバー・ラットを爆発させずに倒す方法が無い訳じゃなかった。
 それは水・氷系の攻撃や魔法だった。
 特にこの火山には火属性のモンスターが多く、アルネは水系魔法や氷結魔法を連発して殆どFPが残っていなかった。
 テリオも技の中に『流水』と言う技があって大地を砕いて水柱を噴き出して敵を攻撃する技がある、でも殆どFPが残って無かった。 
 私もこの前『闇の徘徊者』でアイス・ダガーを手に入れて通常攻撃に氷属性を付属して闘う事が出来る、でもダガーじゃ個体攻撃しかできなかった。
 皆で一斉攻撃して最後に私が止めを刺すと言う手もあるにはある、でもいつ爆発するか分からないモンスターにそれは賭けだった。
 それ以前にボスを攻撃するには子供のボンバー・ラット達をどうにかするしかない、でも1匹1匹倒して行くには時間がかかる。
 一方モンスター達は攻撃し放題、マジで達が悪い……
「みんな、攻撃して」
「ローネ?」
 ローネは言って来た。
「このままじゃいずれにしろクエスト失敗よ、だったら一斉に攻撃した方が良いわ」
「確かに時間が長引けば不利だけど……」
 ローネの言う事は正論だ。
 雑魚達は無視して本命を倒せば確かにクエストは終了する。
 でもそれがやれるならとっくの昔にやってる…… するとローネはアルネとテリオに向かって左手を広げた。
「サーバ!」
 ローネは魔法を使った。
 するとローネの手から緑の光がシャワーのように放たれてアルネとテリオに降り注いだ。
 これは自分のHPかFPのどちらかの半分を相手プレイヤーに分け与えると言う魔法だった。
 勿論ここに来るまで防御魔法や回復魔法を使わなかった訳じゃないけど、アルネ達程FPは消費して無かった。
 ただしテリオは2番目に受けたので、もらったFPはアルネの半分の半分程度だったけど、これで2人は水系の技を使う事が出来る。
「ローネ、ありがとう」
「助かったっス〜」
 2人が感謝するとローネは微笑した。
 MPが回復した事で2人は水属性攻撃を使えるようになった。
 反撃はここからだ!
「流水っ!」
 テリオはダガーを地面に突き刺すと地面が大きく裂けて水柱が噴き出した。
 たちまちボンバー・ラット達を飲み込んで雑魚モンスター達を一掃した。
「もう一度っ!」
 テリオはクリック・スキルを発動、今度は親の方に向かってダガーを地面に突き刺した。
 ボンバー・ラットMの足元が砕けてボンバー・ラットMを飲み込んだ。
『ギャアアアッ!』
 苦手な水を浴びてボンバー・ラットMは横転した。
 巨体を起こした所でキルケが攻撃した。
「正拳突きっ!」
 ルキノの渾身の拳がボンバー・ラットMにめり込んだ。
『ゲェエッ!』
 ボンバー・ラットMは巨体をくの字に曲げた。
 でも私達の攻撃はさらに攻撃は続く。
 私はアイス・ダガーを逆手に構えて懐に飛び込んだ。
「クロス・ブレードっ!」
 2回同時斬撃がボンバー・ラットMの体を斬り裂いた。
『ギャアアアア―――――ッ!』
 ボンバー・ラットMは大きく身を仰け反らせた。
 その一瞬を私達は見逃さなかった。
「アルネっ!」
 私は振り向いた。
 すると後に控えていたアルネが新調した魔道士の杖を構えてスキルを発動させた。
「スキル発動っス!」
 アルネの足元に魔法陣が出来上がるとそれがさらに巨大化した。
 アルネが使ったのは『ダブル・スキル』と言う物で、魔法効果を2倍に増やすと言う物だった。
「めが・こーれるッ!」
 巨大な幾つもの氷の刃がボンバー・ラットMを攻撃した。
『ギャアアアア―――ッ!』
 ボンバー・ラットMはゆっくりと倒れて地響きを立てると画面から消滅した。
「やったっス、やったっス! アタシの勝利っス〜っ!」
 アルネは杖を両手で構えて大きく掲げて兎の様に飛び跳ねた。