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ねとげ~たいむ外伝 ~in,lunry,story~

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 私達は久しぶりにオンライン・キングダムをプレイした。
 今回受けたのは採取『輝く植木鉢』と言うクエストだった。
 ガーデニングが趣味の大富豪が西の砂漠でごく稀に採掘される『輝石』で植木鉢を作る事を決めたらしい。
 だけど砂漠には『砂塵の暗殺者』と呼ばれる殺人コブラ『マッド・バイパー』が現れて立ち寄る者を襲っているらしく、それを倒して輝石を採って来ると言うのが今回の依頼だった。
 全く金持ちのやる事は全く分からなかった。
 例えゲームの事とは言えだ。
 
 遮る物は何も無い果て無く広がった世界。
 雲1つ無い空には灼熱の太陽が照り続け、熱せられた砂と荒野だけの不毛の大地に陽炎が揺らめいていた。
 何の対策も無く迷い込めば確実に命を落とすこの世界に出没するモンスターと私達は交戦中だった。
「はぁはぁはぁ!」
 固まっていると狙われる。
 私達はバラバラに逃げていた。
 するとアルネとローネ達背後の砂が爆発すると『それ』が迫っていた。
「アルネっ! ローネっ!」
 私は叫んだ。
 まるで放たれた魚雷が波飛沫を上げるかのように直進していた。
「くっ!」
 ローネは後ろを見ると顔を顰めた。
 すると2人の足元が盛り上がると巨大なモンスターが姿を現した。
「きゃああっ!」
「ひゃああっ!」
 砂埃が巻き上がり、2人は宙に舞いながら砂上に転がった。
 黒と黄色の縞模様の背中の鱗が乾山の様に逆立った太くて長い胴体、大きく広がった頭部には赤黒い2つの目が輝き、大きく裂けた口には鋭い牙が並んだコブラのモンスターが鎌首を立てながらローネに狙いを定めた。
『ギシャアアッ!』
 マッド・バイパーの口から紫色の液体が放たれた。
「ローネっ!」
 私は防御してスキルを発動する。
 先日付けたばかりのガード・スキルで瞬時にローネの前に立ち塞がり、マッド・バイパーの攻撃を遮った。
 だけど……
「くっ!」
 私は顔を顰めた。
 左腕に持たれた鉄の盾が煙を放ちながらボロボロになった。
 ステータスを開くと防御力が大きく減っていた。
「新調したってのに……」
 私は顔を顰めた。
 すると顔を出したマッド・バイパーにルキノとテリオが攻撃を放った。
「このっ!」
「はああっ!」
 ルキノの拳が唸りを上げ、テリオのダガーが光った。
 しかしマッド・バイパーは砂の中から尻尾を出すと2人を薙ぎ払った。
「うわあっ!」
「ぐああっ!」
 攻撃を食らって2人は砂上に叩きつけられた。
 残ったアルネは杖の先端をモンスターに向けて魔法を放った。
「めが・こーれるっ!」
 杖から幾つもの氷の刃が放たれてマッド・バイパーに向かって飛んで行った。
 しかしマッド・バイパーは再び砂の中に潜ってアルネの魔法を回避した。
「2人とも、大丈夫?」
 私とローネ、そしてアルネはルキノとテリオの側にやって来た。
 HPはそれほど減っては無いみたいだけど、どんな攻撃が来るか分からないのですぐさまローネが回復魔法をかけた。
「何とかね」
「ルナこそ大丈夫か? 盾ボロボロじゃないか」
 ルキノが見る。
 するとローネが申し訳なさそうに顔を暗くした。
「ごめんなさい、私の為に……」
「気にしないで、その為のスキルなんだから」
「そうっスよ、悪いのはあのヘビ・ヤローっス、さっさととっ捕まえて蒲焼にしてやるっス!」
「いや、食えないだろ……」
「何言ってるっスか、コブラは食べられるっスよ、ウナギみたいで美味しそうっス」
「そう言うもんだじゃないだろ!」
 目を細めて舌舐めずりをするアルネにルキノは叫んだ。
 確かに蛇料理は食べられるって聞いた事はあるけど、とてもじゃないが私は食欲わかなかった。
 そんな話をしているとマッド・バイパーが私達の背後から飛び出して再び溶解液を吐き出した。
「またっ!」
「さがって!」
 ローネが先頭に立つと魔法を唱えた。
 ローネの足元に金色の五亡星の魔法陣が輝くと両手をかざして叫んだ。
「ディフェンズッ!」
 目の前に大きな四角い光の壁が出来上がって溶解液を防いだ。
 だけどたちまちローネの魔法障壁は消滅してしまった。
 マッド・バイパーの溶解液は魔法で上げた防御力まで下げてしまうようだった。
 このゲームは武具にも耐久力がある、ある程度使い続けた武器や攻撃を受け続けた防具はやがてダメージが蓄積して壊れてしまう。
 そうなった場合は研石や魔法の粉などの復元アイテムで元に戻す事が出来る。
 なお、普通のゲームなら街に戻ったら自然に武具の耐久力は元に戻るのだけど、このゲームは街に帰ったら鍛冶屋に行ってお金を払って直して貰わなければならない、うっかり直すのを忘れてクエストに出ようものなら大変な事になる。
 ちなみにさらにクエストなどで手に入れたお宝やモンスターの体の一部等を武器にかけ合わせて新たな武器に作り変える『練成』と言うのがあるけど、それはまだ先の話しだった。 

 マッド・バイパーは再び地中に潜ると私達の周りをグルグル周り初めた。
 逃げ場を失った私達はせめて背後を取られない様に武器を構えて背中を合わせた。
「ったく、また砂の中から……」
「大丈夫よ!」
 テリオが一歩前に踏み出すと持っていた鍔と柄が赤く、両刃で大きな刀身のバトル・ダガーを逆手に構え直した。
「何か手があるの?」
「ああ、目には目をって奴かな!」
 テリオが言うと走り出した。
 そして技コマンドを選択した。
「潜航っ!」
 テリオはそれを唱えるとまるで水泳でもするかのように砂の中に飛び込んだ。
 この技はマッド・バイパーと同じ、敵を地面の下から攻撃すると言う物だった。
 すると地響きが起こり、私達の前方の砂が盛り上がるとマッド・バイパーとテリオが飛びだした。
『ギャアアアッ!』
 マッド・バイパーは砂上に倒れると砂埃を巻き上げながら暴れ回った。
 でもキルケのターンはまだ終わった訳じゃ無かった。
「スキル発動っ!」
 テリオの体が紫色に発光すると技コマンドを選択した。
 テリオが使ったのはクリック・スキルと言う物で、戦闘の後にもう一度戦闘コマンドを使用できると言う物だった。
 盗賊は戦士と比べて防御力は乏しい、でもこのスキルがあれば攻撃した後に防御を選択して相手の攻撃を防ぐ事が出来る、でも今回はあえて防御はしなかった。
 テリオは技コマンドを選択、両手のダガーを反転させ順手持ちになると自分の体を大きく仰け反らせた。
 すると巨体を持ち上げたマッド・バイパーの頭部目がけてバトル・ダガーを振り下ろした。
「スラッシュ・ファングっ!」
 2つの刃がマッド・バイパーを切り裂いた。
『ギャアアアアッ!』
 マッド・バイパーは断末魔を上げた。
 テリオが砂上に着地すると同時にマッド・バイパーの巨体がグラついて砂上に倒れると画面から消滅した。
「おっし!」
 テリオは西部劇の保安官の様に両手の中でバトル・ダガーを回転させると腰の鞘に仕舞った。
 その後お目当ての輝石を手に入れるとクエストは終了した。