蜜を運ぶ蝶
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浅木はクラブでの利益をNPO法人の『飛びたて』に寄付していたのだが、税務署はそれを税金対策とした。経営者がどちらも浅木であったからだ。浅木はやむなく修正申告をした。また、売春容疑は証拠もなく、内偵し現行犯逮捕を狙ったのだろうが、容疑が掛ってから、浅木が体を許したのは谷川だけであった。その密会も、1人1人がホテルの部屋を予約した。浅木は自分に自信が無くなっていた。貧しい若者の手助けをしたい。その気持ちに不安を感じていた。それは、自分自身では善行と信じていたが、警察から疑われて、はじめて、自分の行いを振り返ってみた。自分がしなくても良いのではないか、政治家の仕事ではないのか。でも、それは、待っていられなかったから、自分で始めたのではなかったのか。
谷川と体を重ねあいながらも、浅木はそのことで迷っていた。自分の体は男の体では感じないのだ。レズの経験がそうさせてしまった。谷川が裸で汗を流し愛撫する姿が浅木には滑稽だった。どの男たちも自分が満足すればよいのだろうから、好きにやっていればいい。浅木は『飛びたて』をどうするか、谷川のペニスが挿入されても考えていた。谷川の呼吸が荒くなっていた。浅木は間もなく射精されるだろうと思い、サービス精神のつもりで腰を振った。谷川のそれは、襞を1枚1枚めくるかのように掏り掏りした。柔らかな指の感触であった。浅木は体で覚えていたことが蘇えってきたように感じた。体で受け止めた悦びは、浅木の心にまで伝わった。浅木の腕が谷川の体に絡んだ。バレーボールを叩きつけるように、谷川の体を叩いていた。浅木自身が谷川を受け入れたいのか拒否しているのか分からなかった。
体が2つに分かれたとき、浅木も谷川も満足感に浸っていた。