からっ風と、繭の郷の子守唄 第101話~105話
からっ風と、繭の郷の子守唄(103)
「畑に伏せられた3000本の桑の苗木が、試練の冬を迎える」
10月が終り、11月に入ると朝夕の冷え込みが一段と厳しくなる。
よく晴れて冷え込んだ夜には地上へ降りた水蒸気が、翌日の朝、
あたり一面を真っ白に染める。
冬の到来を告げる、初霜の来襲だ。
初霜は、山を染める秋の紅葉と同じように、標高の高いところから
徐々に高度を下げて、やがて平地へ降りてくる。
一ノ瀬の大木から切り取られ苗木も、試練の時を迎えている。
康平たちによって畑へ植えられた3000本の桑苗も、冬を乗り越えるための
本格的な真冬対策に入る。
上州の冬は、表で仕事する人たちに、きわめて過酷な環境を作り出す。
関東地方の最高気温を、連日にわたって更新をしてきた赤城山の山麓周辺も、
冬を迎えたとたん、気候が一転する。
一日中、休みなく強烈な季節風が吹き降ろす、過酷な環境に変ってしまう。
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第101話~105話 作家名:落合順平