からっ風と、繭の郷の子守唄 第101話~105話
「こら。美恵子と言いなさい。美恵子と。
がんは沈黙の病気と言われるほど、発見がとても難しい病気です。
普段からの検診や検査が、初期発見に有効です。
子宮頸がんの治療は、手術や放射線による治療、抗がん剤による
化学治療などがあげられます。
がんの進み具合や、がんの部位、年齢や合併症の有無などによって、
治療法は異なってきます。
初期であれば、妊娠の希望を考慮することもできます。
がん細胞が子宮頸部の粘膜上皮にとどまっている状態の、0期から、
子宮のまわりの臓器や、他の臓器にまで転移しているIV期まで、
段階ごとに分類されます。
0期、またはIa1期までの初期に発見できれば、子宮頸部(けいぶ)の一部を
切り取る手術(円錐切除術)だけで済みます。
その後の妊娠も出産も、可能です。
Ia2期以降になると、子宮の全摘出を行うことになります。
II期では、卵巣や卵管も含めて、子宮機能のすべて取り除く手術が
必要になります。
さらにがんが進行した場合、放射線治療や化学療法も並行して行われます」
「美和子が言っていた3a~bというのは、どの段階にあたるのですか?」
「病巣が4cm以内のものをIb1期と言います。
Ib2期になると、病巣は4cmを超えます。
その上の進行状態が、II期になります。
最近、分類法の表現が変わりました。
ですので3a~bは、このII期に含まれます。
がんが子宮頸部を越えて広がり、骨盤壁または腟壁の下の1/3に、
達しはじめた状態を言います。
千尋さんの場合、予断を許さない状態と考えられます。
場合によれば子宮の摘出も必要でしょうし、常にそうした
危険性がつきまといます。
専門外ですので、それ以上のことは私からは説明できません」
「女性の体へ重い負担をかけるばかりか、精神的にもはかりしれない
ダメージを与えるものなのですね。先生。
あ、いけねぇ、・・・・恵美子さん」
「子宮頸がんは他のがんと異なり、原因が完全に解明されています。
子宮頸がんの原因はほぼ100%、ヒトパピローマウイルスというウイルスで、
感染によるものであることが明らかになっています。
発がん性のこのウイルスは、皮膚と皮膚の接触によって
感染していくウイルスです。
性交渉によって感染すると考えられています。
女性の約80%が、一生に一度は感染していると報告があるほど、
ありふれているウイルスです。
性行動のあるすべての女性が、子宮頸がんにかかる可能性を持っています。
ということは女性のみならず、男性の側にも責任の一端があります。
感染症のエイズ予防のように、コンドームを使うことも有効です。
病気を予防するうえで、清潔なセックスを営むことも大切なことです。
お互いのたしなみというものが重要ですね。
あら・・・・いつのまにか、生々しい話になってしまいました。
これではあなたと私のあいだに、恋愛感情なんかは、
絶対に生まれてきませんね。うふふ」
「子宮頸がんの彼女と向き合うために、何が必要になりますか。先生」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第101話~105話 作家名:落合順平