小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

からっ風と、繭の郷の子守唄 第101話~105話

INDEX|3ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 


 「助かりましたぁ~。
 引き受けたものの、どう説明しようかとドキドキしていたの。
 先生から正しい知識をレクチャーしてもらえば、あなたも真正面から
 千尋と向き合うことが出来ます。
 先輩。康平をよろしくお願いします。
 私は貞ちゃんのお見舞いと、自分の検診に行ってまいります。
 そういうことですから康平くん。
 先生からしっかりと、がんと向き合う『心得』を学んでくださいね。
 じゃあ私はこれで。またあとでね、康平クン」

 よい潮時とばかり、『よっこらしょ!』と美和子が立ち上がる。
『先生は美人ですから、誘惑されたりしないでよ、康平。
話が複雑になってしまいますから。うふふ』
と笑いながら立ち去っていく。
あらためて見直すと、美和子が語ったように、目の前の女医先生も美くしい。
しかしまったく予測していなかったこの展開に、康平の頭の中が
ぐるぐると戸惑っている・・・・

 「ここのモーニングは、美味しいのよ。
 2人前を注文しますから、それをいただきながらお話をいたしましょう。
 そういえば、患者さん以外で若い男性とお話しするのは久しぶりです。
 あなたもよく見ると、けっこういい男の部類に入ります。
 美和子の忠告なんか無視して、どうする?、わたしと本気で
 お付き合ってみない?」

 「先生まで、悪い冗談を言わないでください!」

 『怒ると可愛いわね。康平くんは。うふふ』女医先生は、
まったく気にとめない。
こうなるとまったくの、蛇に睨まれたカエル状態だ。
康平には太刀打ちをする術もない。
万事休すの空気が支配していく中、女医先生のレクチャーがはじめる。

 「子宮は、女性のもつとても大切な臓器のひとつです。
 子宮の入り口付近を「子宮頸部(しきゅうけいぶ)」といい、
 ここににできるがんを、「子宮頸がん(しきゅうけいがん)」と呼びます。
 子宮頸がんになった場合、子宮や子宮のまわりの臓器を摘出する
 場合もあります。
 妊娠や出産を望まない女性であっても、後遺症は残ります。
 仕事や生活にも影響するなど、失うものは大きいのです。
 がんが進行した場合、生命そのものに重大な影響を及ぼすおそれがあります。
 でも子宮頸がんは、原因やがんになる過程が解明されている病気です。
 定期的に検診を受けることで、がんになる前の細胞を
 発見することができます。
 子宮を失わず、治療することも可能になっています」

 「がんは、遺伝的な要素も関与すると聞いたことがあります。
 この病気もやはり同じようなものですか?」

 「遺伝は一切関係ありません。
 性交経験がある女性なら、誰でもかかる可能性がある病気です。
 いま20代後半から30代にかけての女性たちの間で、急増しています。
 特に若い女性ほど、発症率が増加しています。
 子宮頸がんは女性特有のがんの中で、乳がんに次いで第2位を占めています。
 若い女性層において発症するがんの中では、第1位です。
 全世界で毎年、50万人以上がこの病気にかかっています。
 そのうち27万人の女性が、子宮頸がんのために命を失っています。
 時間に換算すると、2分間に1人の割合で亡くなっている計算になります。
 日本でも毎年15000人が、子宮頸がんと診断されています。
 1日に10人のペースで、この病気のために女性の命が失われています」
 
 「実は怖い病気なんですね先生。子宮頸がんという病気は・・・」

 「その通りです。
 でも康平くん。合いの手のように『先生』というのは、
 やめてくれないかしら。
 ハラミ女の美和子が立ち去り、天から降って湧いたデートです。
 私の名は美しさに恵まれた子と書いて、美和子と
 一文字違いの『美恵子』です。
 みえこと名前で呼んでください。遠慮しないで」

 「はい。わかりました。
 でも年上ですから、美恵子さんと呼びます。これからは」
 
 「よろしい。君はなかなか物分りの良い生徒です。
 それでは講義を、さらに前へすすめましょうね。うふふふ」