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たららんち
たららんち
novelistID. 53487
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あの綿毛のように

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 遊びつかれたのか、ものすごく体が重く感じた私は、家に着くとぐっすりと眠りについた。夕食に起きてもなんだか体がだるくて、悪いとは思ったのだけれど、私だけは夕食を食べることなく眠り続けた。
 また、夢を見た。
 私たちは川で遊んでいる。水の冷たさは実際のものよりもさらに冷たく、私は少しも深いところにいけない。
 その私を置いて、海と佐々木さんはどんどん奥へと行ってしまう。私も何とかついていこうとするけれど、私が進むにつれて水温はどんどんと下がっていく。
 「待って!」
 声を出すけれど二人は止まらない。何度か二人に呼びかけると、ようやくこちらを向いてくれた。
 「来んな」
 佐々木さんは冷たい声でそういった。
 目が覚める。汗がひどい。電車で夢を見たときほど息は荒くなってはいないが、その分なぜだか全身が冷たくて、熱い。
 もう一度寝ようと思って目をつぶるけれど、一向に体の冷たさは戻らない。
 嫌な夢を見た所為だ。考えないようにしていたけれど、こう夢に見てしまうといやでも考えてしまう。
 海のこと、佐々木さんのこと。
 二人は仲がいい。実の姉の私よりも。だから不安になるのだ。いつか二人が私を置いてどこかいってしまうんじゃないかと。
 私はまた一人になってしまうんじゃないか。家に帰っても誰もいない、誰も帰ってこない。そんな家に私はもう戻りたくない。
 怖い。怖い。
 私は勝手だ。自分が寂しいというのを、海が寂しくならないようにと理由付けして、まるで私は海のためにやっているのだと思い込んでいた。そんな私から、海は居なくなってしまうんじゃないか。それが怖い。
 知らず知らずのうちに涙が流れて、嗚咽がもれる。
 そんなの嫌だと思う。もう一人は嫌だ。でも、どうすればいいのかわからない。
 「吉岡……?」
 いつの間にか起きていた佐々木さんが私の顔をのぞいてくる。手遅れであることはわかっていたけれど、涙を拭う。
 「吉岡、大丈夫?」
 涙をこらえて、笑顔を作る。大丈夫、大丈夫。私は元気だ。ネガティブになってはだめ。みんなが離れてしまうから。
 不意に、額に手を当てられた。
 「よ、吉岡! すごい熱だよ! ちょ、ちょっと待って!」
 大慌てでどこかに行ってしまった佐々木さん。その姿を見てまた私は怖くなる。
 どこへ行くの、佐々木さん。
 そこからの記憶はあいまいでよく思い出せない。

作品名:あの綿毛のように 作家名:たららんち