あの綿毛のように
四
遊びつかれたのか、ものすごく体が重く感じた私は、家に着くとぐっすりと眠りについた。夕食に起きてもなんだか体がだるくて、悪いとは思ったのだけれど、私だけは夕食を食べることなく眠り続けた。
また、夢を見た。
私たちは川で遊んでいる。水の冷たさは実際のものよりもさらに冷たく、私は少しも深いところにいけない。
その私を置いて、海と佐々木さんはどんどん奥へと行ってしまう。私も何とかついていこうとするけれど、私が進むにつれて水温はどんどんと下がっていく。
「待って!」
声を出すけれど二人は止まらない。何度か二人に呼びかけると、ようやくこちらを向いてくれた。
「来んな」
佐々木さんは冷たい声でそういった。
目が覚める。汗がひどい。電車で夢を見たときほど息は荒くなってはいないが、その分なぜだか全身が冷たくて、熱い。
もう一度寝ようと思って目をつぶるけれど、一向に体の冷たさは戻らない。
嫌な夢を見た所為だ。考えないようにしていたけれど、こう夢に見てしまうといやでも考えてしまう。
海のこと、佐々木さんのこと。
二人は仲がいい。実の姉の私よりも。だから不安になるのだ。いつか二人が私を置いてどこかいってしまうんじゃないかと。
私はまた一人になってしまうんじゃないか。家に帰っても誰もいない、誰も帰ってこない。そんな家に私はもう戻りたくない。
怖い。怖い。
私は勝手だ。自分が寂しいというのを、海が寂しくならないようにと理由付けして、まるで私は海のためにやっているのだと思い込んでいた。そんな私から、海は居なくなってしまうんじゃないか。それが怖い。
知らず知らずのうちに涙が流れて、嗚咽がもれる。
そんなの嫌だと思う。もう一人は嫌だ。でも、どうすればいいのかわからない。
「吉岡……?」
いつの間にか起きていた佐々木さんが私の顔をのぞいてくる。手遅れであることはわかっていたけれど、涙を拭う。
「吉岡、大丈夫?」
涙をこらえて、笑顔を作る。大丈夫、大丈夫。私は元気だ。ネガティブになってはだめ。みんなが離れてしまうから。
不意に、額に手を当てられた。
「よ、吉岡! すごい熱だよ! ちょ、ちょっと待って!」
大慌てでどこかに行ってしまった佐々木さん。その姿を見てまた私は怖くなる。
どこへ行くの、佐々木さん。
そこからの記憶はあいまいでよく思い出せない。