からっ風と、繭の郷の子守唄 第96話~100話
からっ風と、繭の郷の子守唄(98)
「美和子が語る女の気持ち。それに聞き耳をたてている女医の先生」
「ほら。すぐ、そおんな風に泣きそうな顔をする。
困りますね、あなたには。
優しすぎるあなたのことだから、どうせまた、途方に暮れているんでしょ」
美和子がため息を漏らす。そっと、手で康平招く。
『そんな事だろうと思って早めに来たの。でも、ここじゃまずいわ。
人が多すぎます』康平を目の前に立たせたまま、美和子が周囲を見回す。
9時を過ぎた病院のロービは、時間とともに人の出入りが増えてきた。
『表のカフェに行きましょう』そうつぶやいて、美和子が椅子から立ち上がる。
すこし重そうな様子に、思わず康平が自分の右手を差し伸べる。
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第96話~100話 作家名:落合順平