からっ風と、繭の郷の子守唄 第96話~100話
からっ風と、繭の郷の子守唄(97)
「病は次から次へと連鎖を呼ぶ?。思いがけない千尋からの告白」
荷物を貞園の部屋へ運び終えた千尋が、康平へ目配せする。
後ろへついて部屋を出ていくと、千尋が予想外の方向へ歩きはじめる。
ロービーへ行かず、屋上への階段を登っていく。
9時を過ぎた屋上に、たくさんの洗濯物がひるがえっている。
喫煙する人たちが、ゆっくりたなびく煙と、今日の秋空を交互に見上げている。
「着替えたいのに邪魔でしょう。部屋にあなたが居たら」
「それから、もうひとつ」と、千尋が手すりにもたれる。
ツンと、青い空を見上げる。
青空のまぶしさが染み入るのか、千尋が思わず目を細める。
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第96話~100話 作家名:落合順平