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からっ風と、繭の郷の子守唄 第96話~100話

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 冬用の布団の上に、埃が落ちている。
『おかしいわねぇ』見上げた美和子の目に、かすかにずれている
天井板の様子が目に入る。
電気工事や点検のため、屋根裏へ潜り込むための開口部に小さな隙間が見える。
「変ですねぇ、開口部に隙間が出来ています。直しておかなくちゃ・・・」
美和子が不安定な体勢で、押し入れの上の段へ登る。

 指先が触れると、天井板がそっと動く。
開口部が、さらに大きく開いてしまう。
『あら、やだ。この板は、思いのほか簡単に動くのね』
何気なく、天井裏を覗き込んだとき、目の前に横たわる包みを見つけ出す。
『なにかしら・・・・』そっと伸ばした指先へ、固い感触が、
瞬時にはねかえってくる。

 包みは、片手でも持てそうな大きさだ。
だが何故か違和感を感じる。ずっしりとした重さの中に、危険な匂いを感じる。
美和子の指先が、包装物を握り締める。
ずしりとした包装物の手応えが、美和子をさらに不安にさせる。

 『見てはいけないものかもしれない・・・』
しかし、怖いもの見たさの本能が有る。
ビニールでぐるぐる巻きされた包装の下には、薄茶色の油紙が見える。
大きさといい重さといい、もしかして、これって拳銃かしら?・・・・
間違いない。油紙に包まれた物体は、明確に拳銃の形をしている。
『なぜこんなものが、ここへ置いてあるのかしら・・・」
美和子の全身を、衝撃が駆け抜けていく。

 美和子は一度だけ、拳銃を目にしたことがある。
繁華街を周りながら、歌手活動をしていると、いつしか地元の暴力団員や
関係者と顔見知りいになる。
スナックで顔見知りになった女の子と、親しくなった時のことだ。
お互いのアパートへ泊まりあうようになる。
彼女の部屋には、ときどき、妻子持ちの暴力団員が遊びに来る。

 『ここは、武器の保管基地なの』
悪びれもみせず、彼女が見せてくれたのが油紙に包まれている拳銃だ。
見せてくれた拳銃は、油紙のうえに更にビニールがぐるぐると巻いてある。

 『やくざは普段は、拳銃を持ち歩かない。
 いざというときのため、あちこちに武器の保管庫を作るの。
 自宅や組の事務所に戻っていたのでは、時間的に間に合わないときもある。
 だからこうして、有事にそなえて密かに隠しておくの。
 でもナイショだよ。ばれたらあたしが、消されちゃうもの。
 あっはっは』

 暴力団員の愛人に見せてもらったものと、今回のものはそっくりだ。
(拳銃にまず、間違いないと思います・・・
気が付かなかったことにするのが、一番のようです・・・)
美和子がまた元あった場所へ、拳銃の包みを用心深く、
そっと戻していく。