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【創作】「幸運の女神」

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少女が初めて外に出たのは、村人達に自身の存在が知られたときだった。目も眩む日差しの中、多くの影が自分を見下ろしている。両親が何かを訴えかけるように叫び、罵声がそれをかき消す。
少女はただ戸惑い、怯え、神に祈った。

両親とも周囲とも違う白い肌を持って生まれたことが、不幸の始まりだった。白い肌は悪魔の呪い、忌み子は処刑されるのが掟。掟に背くことは、万死に値する罪。
その掟に、両親は背いた。
一人娘を地下に隠し、幸運の女神の名を付けた。神の加護を得られるようにと。

薄暗い地下で一日の大半を過ごし、外に出るのは皆が寝静まった夜に少しだけ。少女は日の光を知らず、村の掟を知らず、人目を避ける意味を知らずに育つ。いつか、両親の語る「神の楽園」で暮らすことを夢見て。

だが、長く隠し通せるはずもない。隠れ住む暮らしはあっけなく終わり、少女は白日の下に引きずり出された。懇願する両親は、目の前で村人達から石を投げつけられ、血を流してうずくまる。少女は首に縄を掛けられ、今まさに吊られようとしたその時、蹄の音と男の制止する声が響いた。

眩しい日差しの中で、少女は呆然と座り込む。首にかけられた縄を、無骨な手が優しく外した。

「さあ、もう大丈夫だ」

抱き上げられ、穏やかな目が少女の顔をのぞき込んでくる。あれほどいた村人は、影すら見えなかった。周囲を取り囲む男達は、日に焼けてはいても薄い色の肌をしている。
何が起こったのか理解するのに、少女は幼すぎた。ただ、目の前の相手は、自分を怒鳴ったり殴ったりしてこない。それで十分だった。

「私はアレス。アレス・ロズウェルだ。お前の名は? 言葉は分かるか?」
「・・・・・・ヴァリ」

ヴァリの言葉に、アレスは嬉しそうに笑った。

「ヴァリ。お前はヴァリというのか。幸運の女神の名だな」



作品名:【創作】「幸運の女神」 作家名:シャオ