小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

からっ風と、繭の郷の子守唄 第91話~95話

INDEX|9ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 


 「良い質問です。
 患者さんは、適切な診療と精神安定剤の投与で、一時的に落ち着きます。
 発作の原因となるような、日常生活での不満や不安、怒りが
 自覚できるようなら、それらを整理し、明確にしていくことが大切です。
 ただし若い女性の場合、周りが過剰に心配してしまうと、逆効果になります。
 余計に心をかき乱され、症状が悪化してしまう場合もあります。
 発作がおきても、周囲の人はなるべく冷静に対処をすることです。
 これもまた、治療上での重要なポイントです」

 「では、何かあったら呼んでください」と、乾いた靴音を響かせながら、
女医先生が廊下を颯爽と立ち去っていく。
「日常生活のストレスねぇ・・・・」康平が、ぼそっとつぶやく。

 「幸太郎氏の再婚話が、引き金になったのかしらねぇ。
 口にしていないけど、当人には、相当のショックだったみたいだもの」

 「常習の可能性が有ると言っていたから、根は意外に深そうだ。
 俺が付き添うから、君は帰って休んだほうがいい。
 その代わり。入院させたほうがよさそうだから、入院に必要なものを
 ひととおり揃えて、明日また、病院へ来てくれ。
 光太郎氏へは、後で連絡を入れるように陽子ママに頼んでおく。
 悪いね。こんな面倒に君を巻き込んでしまって」

 「それくらいならお安い御用です。
 康平くん。こんな時に変な話だけど、貞ちゃんは妹扱いされることに、 
 前々から不満が溜まっていたみたいなの。
 時々、私が嫉妬するくらいの目で、康平くんを見ている時があるの。
 それくらいのことは、私でも気がつきます。
 でもね。必要以上に優しくし過ぎないでね。
 今度は私が『過呼吸』になっちゃうかもしれません」

 「おい。こんな時に悪い冗談を言うなよ。不謹慎過ぎるだろう」
 
 「うふふ。ごめんなさい、けど、全部本当の話です。
 今の貞ちゃんには優しさが必要です。
 でも、くれぐれも患者さんへの慈しみだけにしてくださいね。
 康平くんは誰にでも常に優しすぎるんだもの。
 時々危なかしくて、見ていられません。
 私だって、感じやすい女のひとりです。
 明日の朝、8時くらいにまた来ますから、そのときに交代しましょう。
 じゃ、また。明日」


 くるりと背を向けた千尋が、廊下を少し大股で遠ざかっていく。
(あれ。泊まるとは言っていないのに、朝までそばに居ろと言いきったぞ。今。
 貞園から、目を離すなという意味か。まだ何か有るのかな・・・・
 事態は思った以上に深刻ということか?。
 やっぱり俺には、女という生き物が何をどんな風に考えているのか、
 いまだに、さっぱり、見当がつかない・・・)