小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

からっ風と、繭の郷の子守唄 第91話~95話

INDEX|8ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 


 「過呼吸症候群というのは、若い女性に多くみられる病気です。
 まれに男性や高齢者にみられることもあります。
 しかし、ほぼ女性にかぎられている病気です。
 発作がやってくると、息があらくなり、徐々に両手の指先や、
 口の周りがしびれます。
 脳内にある呼吸中枢部が過剰に刺激されたことで、呼吸が多くなります。
 血液の中にある二酸化炭素が、急激に減ります。
 過呼吸の状態に陥ると、空気が吸い込めない苦しさを強く感じます。
 一生に一度しか出ないという人も居れば、頻発するケースもあります。
 早めに落ち着いた様子から判断をすると、患者さんは間違いなく
 常習的な過呼吸症と思われます。
 初めて見たとおっしゃっていますが、本人も他人の目のあるところで、
 初めてという発作をおこしたのでは、ないでしょうか」

 「普段から貞園は、過呼吸に悩まされてきたという意味ですか?」

 「不安になりやすい性格の人が、発症しやすいのです。
 性格とは関係なく、過剰な心理的ストレスや、運動(マラソンなど)
 などから、誘発されることもあります。
 女子高校のマラソン大会でゴールした直後に、過呼吸発作を生じる
 ケースなども報告されています。
 遊び心で年頃の女の子たちが、意図的に呼吸を数分間早めるだけで、
 過呼吸発作を誘発してしまう場合もあります。
 パニック障害の一症状としてみられる場合もあります。
 持続的な不安や不満。心理的な緊張や怒りなど、気分を大きく
 興奮させる状況などで、生じやすくなります。
 過労や寝不足、風邪による発熱などでも、発症が助長されます」

 「ストレスも、過呼吸の原因になるということですか」

 「身体の反応に、『臓器選択性』というものがあります。
 ストレスにより、ある人は胃腸症状になり、ある人は頭痛になり、
 そしてある人達は、過呼吸症の症状に陥ります。
 過呼吸症の診断は、簡単にできます。
 発作時に、動脈血の酸素濃度と二酸化炭素の濃度を病院で調べてもらえば、
 容易に診断できます。
 少量の採血で、即刻(1分間)診断が可能です。
 発作時は、血中の二酸化炭素の濃度が異常に下がります。
 酸素濃度が、急激に高くなっています。
 診察室でわざと速い呼吸をさせ、過呼吸を誘発させる「過呼吸誘発テスト」
 という診断方法もあります。
 過呼吸は、時間がすぎれば、快癒してしまう病気です。
 本人には、また再発したらどうしょうという不安が、常につきまといます。
 ゆえに主治医とちゃんと相談して、適切な治療が必要となる病気です。
 過呼吸の多くが、「体質的なもの」か、「心理的興奮」です。
 周囲に迎合しすぎる自己犠牲的な人に、この病気が多いように思われます。
 入院させて経過を見たいと思いますが、どうします?
 もちろん。本人が望めばという、お話ですが」

 「あのう・・・・私たちは、どのように対応するのが一番でしょうか」

 千尋が恐る恐る女医へ質問を投げかける。
女医先生が赤いメガネを押しあげて、にこやかに質問に応える。