からっ風と、繭の郷の子守唄 第91話~95話
からっ風と、繭の郷の子守唄(94)
「静かに更けていく病室で、貞園が見つづける夢と諦める夢」
眠り続けていた貞園が、ようやく目を覚ました。
治療を受けてから、ほぼ3時間が経過している。
10月が近づいてきた窓の外は、夜半になるにつれ、月が青く輝やく。
(薄暗いですねぇ。何時になるのかしら・・・)
目覚めた貞園がほの暗い照明の下で、腕時計を覗き込む。
「目覚めたかい?。まもなく12時になる。
シンデレラの馬車が、かぼちゃに変ってしまう時間さ」
「それは残念です。
こんなことなら、今日は、ガラスの靴を履いてくればよかった」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第91話~95話 作家名:落合順平