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からっ風と、繭の郷の子守唄 第91話~95話

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 「皮肉を言えるようなら、もう大丈夫だろう」

 「喉が乾いたわ、康平。
 なにか甘くて、冷たいジュースが飲みたいな。
 先生がダメだというのならあきらめますが、朝まで我慢できそうもない」

 「アルコール以外なら俺が許可する。ついでにコーヒーも買ってこょう」

 「じゃ。あたしにもついでに、甘めのコーヒーを」

 (わかったよ)と答えながら、康平が廊下へ出ていく。
病室に残された貞園が、ポツンと残っている点滴の容器を下から見上げる。
(まいったなぁ・・・・みんなが居るところで、発作が来るとは思わなかった)
唇を噛みしめながら、乱れた前髪をかきあげる。

 貞園のいつもの癖だ。
なにか失敗をしでかしたあと、必ずこうして唇を噛み、前髪をかきあげる。
ときには、軽く肩をすぼめておどけてみせる。
(ベッドの上では、さすがにそれは出来ないか・・・・)
口元へ、苦い笑いを浮かべる。

 「買ってきたぜ。すぐ飲みたいのなら、栓をあけてやる」

 「飲みたいわ」

 貞園がベッドから上半身を起こす。
差し出されたコーヒーを一口だけ飲む。そのまま冷えた缶を、額へ押しあてる。
冷たさが、瞬時に脳内を駆け抜けていく。
身震いをおこしそうなほど、渡された缶は充分に冷え切っている。

 「おい、あまり無茶するな。無人のロビーから買ってきたんだぜ。
 夜中になると自販機の飲み物は、これでもかとよく冷える。
 ましてここの自販機は、真夏の設定のままだ。
 キンキンによく冷えている。
 もうそろそろ温かいものが恋しくなる、そんな季節だからね」

 「ありがとう。千尋ちゃんが居ると思ったら、
 康平が残ってくれたんだ」

 「千尋なら明日の朝。入院用の用具を揃えて、やって来る。
 光太郎さんへは伝言してくれるように、陽子ママに電話で頼んでおいた。
 なんだ。病室へ俺が残ったのでは不満か」

 「嬉しいとは言えないでしょう。千尋ちゃんの手前。
 あたしの持病が、みんなにばれちゃったわね。・・・まいったなぁ」

 「いつから過呼吸なんだ?」