からっ風と、繭の郷の子守唄 第86話~90話
からっ風と、繭の郷の子守唄(88)
「なんだかんだ言ったって、男はやっぱり『赤いトラクター』」
連日の水路工事が続く中。畑の土壌改良もはじまった。
草だけが茂っていた畑は、五六が持ってきたトラクターにより、
綺麗に耕された。
黒々とした土が現れただけで、なぜか良い土地に戻ったような気分になる。
「良い畑というのは、土が元気な畑のことだ。
土つくりは農業の基本じゃ。
化学肥料や農薬に頼りすぎないことも、大切なことだ。
肥料をたくさんやれば、それだけ元気で立派な作物が育つ。
だが勘違いをするな。
それらはあくまでも肥料が育てたもので、土のおかげじゃない。
大切なことは土に力をつけさせて、安全で健康な作物を育てることじゃ。
健康な土には、微生物が住む。
ミミズが住んでいる畑が、本当の意味で健康な畑だ。
蚕も同じじゃ。、絹は、100%の天然素材じゃ。
生糸から作られた布地は、直接人の肌へ触れる。
口に入れる食物たちと同様、蚕を育てるにも、細心の注意を払う。
これは当たり前のことだ。
10年以上も耕作していない、痩せこけた土地に騙されるな。
来年のためにまずはしっかりと、有機の準備をしておく」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第86話~90話 作家名:落合順平