からっ風と、繭の郷の子守唄 第86話~90話
からっ風と、繭の郷の子守唄(87)
「農業というものはまず土つくりから始まり、ふたたび土へと還る」
「早速、やってきおったか、ふたりして。
行動が早いのは、良いことじゃ。
若いものは失敗を恐れず、何事にでも挑戦することが大事じゃ。
失敗を繰り返してこそ、人は賢くなる。
最初は誰でも素人だ。
どれ、それでは現地調査へ行くか。ついてこい、二人とも」
康平と英太郎の2人が、揃って徳次郎老人を訪ねてきた。
目を細めた老人が、予期していたかのようにふたりを出迎える。
縁側でお茶を飲んだあと、どっこらしょと掛け声をかけて老人が立ち上がる。
そのまま桑の大木へ向かうかと思いきや、山を目指して細い道を歩き始める。
「千佳はどうした。
いきなり裏の畑を桑畑にすると言われては、目を白黒させていたであろう。
そうでもないか。あれでも昔は、赤城の糸を紡いでいたひとりだ。
久しぶりの桑の話に、喜んでいるかもしれんのう。内心は」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第86話~90話 作家名:落合順平