からっ風と、繭の郷の子守唄 第86話~90話
からっ風と、繭の郷の子守唄(89)
「百姓は土の民。失敗しながらも大地に逞しく生きるのが定め?」
500m余りにわたる水路の復旧工事は、思いのほか苦戦する。
長年にわたる雨風の影響で、土砂が詰まっている。
落ちた枯れ枝やゴミが、いたるところで水の流れを阻害している。
石積みや土手が、あちこちで崩壊している。
ポンプ車を使って放流してみたが、水の流れは枯れ沼まで辿り着かない。
ほとんどが川から溢れ、畑に水たまりを作る。
やがてその水も、大部分が地中へ消えていってしまう。
「どの部分が流れをさえぎったのか、大体わかった。
それでも半分までは流れたから、今回は成功としょう。
ゴミをとり除き、石で土手を補強すれば下流まで流れるようになるだろう。
材料には不自由しないぞ。川原には石がくさるほどあるからな。
そいつを使って、気長に水路を復活させようや。なぁ、康平!」
作品名:からっ風と、繭の郷の子守唄 第86話~90話 作家名:落合順平