返信不要。
ある日、レジカウンター越しにそのゲイに話しかけられた。
「すみません。ちょっとお尋ねしたいのですが、コピー機が動かなくて…」
私はゲイの明らかに外見とミスマッチな物腰の柔らかさに驚き、たじろいだ。
「あっ、はい。少々お待ちください。」
慌ててパタパタとコピー機に向かう。
コピー機が壊れて…いるのか?
なにこの画面。初めて見る。どうしよう。
ゲイを馬鹿にしていたはずの私は、あるまじきことに、ゲイの目の前でオロオロとするばかり。
とりあえずそれらしきボタンを押してみると、
音を立てるコピー機。
あ、いけたっぽい。
コピー機を見守る、私とゲイ。
「…。」
沈黙に耐えられず、話しかけてみた。
「よくこちらでお買い物してくださってますよね」と言うと、
一瞬大きく目を見開くゲイ。
一拍間を空けて、
「そうなんです、職場が近いんで…」と答えてくれた。
コピー機がふんばっている間、少し話して
「あ、もうコピーできそうですね」
と言って離れた。
レジカウンターに戻ると、アルバイト仲間が小声で
「あんた!ゲイと話してたじゃん!」
と嬉しそうに言った
「どんな人だったの?菓子パンの謎は解けた?やっぱりゲイだから?」
と、まくしたてる彼女に
先ほど話した内容を教えつつ、本物のゲイと話したことに感動を覚えていた。